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愛媛

愛媛の山を代表する石鎚山脈は、「四国の屋根」でもあり、標高2000m近い高峰、名峰が連なる関西きっての登山のメッカ。とりわけ盟主石鎚山は広く名を馳せ、「愛媛の顔」といえる存在だ。

一方で、愛媛県は瀬戸内海と宇和湾に臨み、沖縄県に次ぐ全国第5位の長い海岸線も合わせもっている。そして、石鎚山脈を中心に、赤石山脈、法皇山脈、高峰山系、鬼ヶ城山系といった標高1000mを超える山群が、いずれも海岸線に迫る勢いで峻立している。

従って、どの項からも美しい内海の島々や海岸線など、山と海があいまった風光明媚な景観を楽しむことができる。展望の良否山登りの楽しみのなかでも重要な要素だ。その点、愛媛の山は地勢的にたいへん恵まれ、単なる山岳風景に留まらない良さがる。

また、本県では亜熱帯から亜寒帯まで、幅広い豊かな植生が見られるが、山岳地の代表樹・ブナは概ね標高1000m以上に万遍なく分布している。なかでも石鎚山〜瓶ヶ森、大野ヶ原、三本杭には広範囲にブナ自然林が残っている。また、石鎚山や二ノ森、笹ヶ峰の山頂付近では亜寒帯植物のシラベが群生を成し、高山的な雰囲気を醸しだしている。なお、県内のブナ林は、ミズナラ、ツガなどとの混成林がほとんどで、純林は皆無に近い。

東部の山々

石鎚山のほか、赤石山系、法皇山系などが含まれ、標高1500m以上の高峰が30数座ひしめく県下一の山岳地域だ。北麓を走る中央構造線に沿って、東西一直線に延びる山脈に直行するように南北から登山コースが開かれているが、断崖崖が発達して標高差が大きい北面コースに対し、南面コースは総じて緩やかで登りやすい。

石鎚山脈は年間約30万人が訪れる石鎚山を筆頭に、有名な山がずらりと並ぶが、石鎚山に匹敵するような峻険な山は少なく、笹に覆われた山が多い。したがって稜線部はたいへん見晴らしがよい。

石鎚山は周知のとおり西日本最高峰だが、日本七霊山にも名を連ね、信仰登山が盛んだ。7月1日から10日の大祭期間中だけでも数万人が訪れる。

石鎚山に次ぐ人気の瓶ヶ森は、雲上に広がる準平原・氷見二千石原が持ち味。ほかにコメツツジの名山・笹ヶ峰、紅葉と霧氷の伊予富士、寒風山、シャクナゲと笹尾根が魅力の堂ヶ森〜二ノ峰、アケボノツツジと原生林の岩黒山〜筒上山、さらにカタクリの冠山〜平家平など、それぞれの季節に合わせて楽しめるコースが揃っている。

石鎚山脈から分かれる赤石山系の峰々は、他の山域にはない特異な性質を持っており、特に地形と植生が顕著だ。主峰・東赤石山の高山性植物群落は蛇紋岩地質によるもので、固有種、希少種が多い。西赤石山のアケボノツツジ群落、ツガザクラ南限地の銅山峰、二ツ岳の岩場など魅力ある山が多い。

最近の傾向として日帰り登山が主流となっているが、石鎚山、瓶ヶ森、笹ヶ峰、東赤石山、西赤石山には、夫々営業小屋と指定キャンプ場があるので、ゆっくり山を楽しんでみたいものだ。二ツ峰から堂ヶ森まで、石鎚山脈から赤石山系を踏破する大縦走にも挑戦できる。

中部の山々

この地域は、カルストの山、都市近郊の山、歴史の山、半島の山、島嶼(とうしょ、嶼は小さな島)部の山々などバラエティに富み、高原と低山主体のハイキングに適している。南部には大川嶺、中津明神山、日本最高所のカルスト台地として知られる大野ヶ原、五段高原など、標高1500m級の高原状の山が峻立し、これらを頂点に南高北低の地勢を呈している

石鎚山脈につながる笹ヶ嶺連峰の尾根筋には自然林がよく残り、主峰皿ヶ嶺のブナ林には定評がある。また、皿ヶ嶺は典型的な準平原の山で、山頂下に竜神平と呼ばれる県下ではまれな高層湿原が広がっている。

高縄湿原で注目されるのが高縄山と楢原山だ。どちらも由緒ある霊山で、山頂付近にブナ、ミズナラ、カエデ、スギの巨木を交えた自然林が残っている。また、楢原山から出土した平安時代の宝塔、鏡は国宝に指定されている。

このほか、島嶼部にもたくさんの山があるが、登山の対象となるものは数少ない。大三島の鷲ヶ頭山(わしがとうざん)は古くからハイキングコースが整備され、最も人気がある。

南部の山々

鬼ヶ城山、高月山、三本杭、八面山といった主要山岳が、滑床渓谷の周りにコンパクトに収まっている。これらを中心に、北に高森山、泉ヶ森、南に譲ヶ葉森、篠山へと山並みが延び、南伊予山系を形成している。最高峰は高月山で標高1229m、渓谷を取り巻く山は一様に花崗岩地質特有の険しい相を見せる反面、滑床渓谷は名のとおりナメ状の美しい渓谷だ。日本の滝百選のひとつ・雪輪ノ滝は渓谷一の見どころ。夏は滝滑りが楽しめる。

鬼ヶ城山など一連の山は、車を利用すれば容易に登れるが、宇和島市街から歩いて登ることもできる。美しいリアス式海岸を眼下に望む山登りはこの地域ならでは。尾根一帯は自然林に包まれ、三本杭から八面山にかけては山系随一のブナ自然林が広がる。ブナに暖帯樹が混ざっているのが南予の特徴だ。

最南端の1000m峰・篠山は、南予一円の信仰を集める霊山で、アケボノツツジ、コウヤマキ、ハリモミなど特有の植生が注目される。

山行上の注意点

交通アクセスは、石鎚山近辺、松山、宇和島近郊を除いた地域では、マイカーとタクシー利用が便利だ。公共交通機関は季節や時間的制約だあるので、事前の問い合わせが不可欠となる。

マイカー利用の際も事前の確認が必要で、石鎚スカイラインは通行時間制限がある。近年、林道の舗装が進み、走行は楽になったが、佐々連尾山、豊受山、三ヶ森、中津明神山には未舗装区間が長く残っているので、運転には十分注意をしたい。

登山中の注意点で、無視できないのが毒ヘビの存在だ。ヘビはよく見かけるが、マムシ、ヤマカガシがいても、滅多に襲ってくることはない。見つけたらそっとしておくことだ。

気候と風土

愛媛県は柑橘類栽培が盛んなことからもわかるように温暖な土地だ。平野部で年に一、二度積雪を見る程度で、標高1000m以下の山であれば、冬季の登山はさして問題はない。夏の低山は蒸し暑く登山には向かないが、幸い本県は涼しい高山にも恵まれている。5月、梅雨明けの7月、10月は、1年でもっとも晴天に恵まれ、新緑や花、紅葉が盛りを迎える時期でもある。

愛媛の山は海に近いため、夏はガスが発生しやすいが、秋は瀬戸内海から雲海が押し寄せ、稜線の南側になだれ落ちる滝雲がしばしば見られる。晩秋となると、寒気の南下にともなって北面一帯に見事な霧氷の花が咲く。南予山系は南部に位置するが、冬季は関門海峡を抜けた寒気が直接入るために意外に積雪が多い。

周辺の観光地

松山城:観光都市松山のシンボルで、国の重要文化財。一帯が公園化されサクラの名所でもある。天守閣から瀬戸内海や石鎚山が望める。

道後温泉:聖徳太子も来浴したという、わが国最古の温泉。道後温泉本館は風情ある木造建築で、観光客が絶えない。そばに子規記念博物館がある。

しまなみ街道:芸予諸島の6つの島を結ぶ海の道。大三島の大山神社、大島の亀老山から来島海峡にかかる三連吊橋などが見どころ。

大洲、内子:大洲は清流肘川に沿って開けた城下町で、伊予の小京都と呼ばれる。鵜飼いで有名。内子は江戸末期から明治にかけて木?生産で栄えた。商家、民家、土蔵など、当時の古い町並みが残っている。



Last modified: Thu, 08 Feb 2018 20:10:36 +0900
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