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香川

香川県は四国の北東に位置し、四国の面積の約1/10と、日本で一番面積の狭い県である。しかし、人口は四国の1/4で、この数字が物語るように、人口密度は高い。平野が多く、山が低いためである。

県内の最高峰は竜王山(1,060m)で、1,000mを越える山は、この竜王山と大川山(1,043m)のみである。徳島県との県境には讃岐山脈があり、平野部は一般に讃岐平野と呼ばれ、多くの溜池が点在している。

ほとんどの川は讃岐山脈に源を発して北に流れ、瀬戸内海に注いでいる。一級河川は土器川のみで、通常、川の水量は少ない。1年間の降水量は、瀬戸内海地方で最も少ない。その上、晴天日数が多く昔から水不足に悩まされてきた。

目を北に転じれば、瀬戸内海国立公園に指定される小豆島などの島々が瀬戸内海に点在している。香川県の山は、四国八十八ヶ所を抜きにしては語れない。本書の中にも、弘法大師・空海の伝説が残るお遍路のコースが入っている。そして、山中には平成28(2016)年に一般公開された「屋嶋城」や、大川山の標高600〜700mにある「中寺廃寺跡」など、山城跡や遺跡も多い。

讃岐山脈の山々

東の端には源義経が越えたといわれる大坂峠(392m)があり、大山(691m)、檀特山(631m)、女体山(774m)、矢筈山(789m)、高仙山(627m)へと続く。女体山(774m)から東の県境の山は、登山者も余り入らないため、道も少し荒れている。

中央部にある大相山(881m)は大滝山(946m)の近くにあるが、静かな山歩きが楽しめる。大滝山、竜王山(1060m)、大川山(だいせんざん1043m)は大滝大川県立自然公園の中心をなし、県境の山では最も歩かれている。竜王山よりいくつかの支尾根が北にのび。笠形山(762m)もそのひとつである。県内でいちばん高い部分を形成している。

阿波と讃岐を結ぶ峠道は、借耕牛が通った道として知られる。三頭峠(三頭越)は「こんぴらさん」への参拝の道であり、石の鳥居などが残っている。また、箸蔵街道(790m、石仏垰)は讃岐より阿波・箸蔵寺への参詣道として歴史を感じる道である。猪ノ鼻峠の西に続く中蓮寺峰(756m)と若狭峰(787m)は「四国のみち」として、整備された歩きやすい道である。しかし、県の西部に位置する県境の山は、バスの便などが不便で、必然的にマイカー、タクシー利用となる。

県西部で目立つ山は頂上部に六十六番札所・雲辺寺を有する雲辺寺山(927m)で、平野部より特徴的な山容を望むことができる。西の端には大谷山(507m)と金見山(596m)があり、愛媛県との県境となっている。

平野部の山々

平野部の山々は里山歩きの対象として、半日あれば充分楽しめる山が多い。東部の虎丸山(417m)は近隣の学校で古くから集団登山で登られている有名な山である。与冶山(187m)の西、鹿浦越には世界的にも珍しいランプのファイヤー(こう班岩)岩脈があり、海と山の両方が楽しめる。

高松市周辺には五剣山(366m)、屋島(292m)、目山(192m)、堂山(304m)、石清尾山(いわせおやま、232m)が市街地を取り巻くように点在している。

五色台aka猪尻山(483m)は白峯寺と根香寺、国分寺を結ぶ、遍路歩きが楽しめる。丸亀市、坂出市の境に「讃岐富士」の別名で親しまれる飯野山(425m)がある。空海ゆかりの善通寺の西には我拝師山(481m)が、南には「こんぴらさん」として親しまれる金刀比羅宮が山腹に鎮座する大麻山(616m)がそびえている。

西部では、荘内半島に頂上のサクラで有名な紫雲出山(352m)があり、瀬戸内海の展望が楽しめる稲積山(404m)などもある。

島嶼(とうしょ、嶼は小さな島)部の山々

瀬戸内海に浮かぶ島で、淡路島に次いで大きい小豆島が中心となる。寒霞渓、星ケ城山(817m)は、秋は紅葉、冬は積雪が見られることもあり、0mからの登山が楽しめる。千羽ヶ岳(371m)の前衛峰である拇指嶽(371m)や吉田ダム近くには、ロッククライミングのゲレンデがあることで有名である。小豆島の西に位置し、不法投棄で話題になった豊島には檀山(340m)がある。瀬戸大橋の西は「潮が湧くところ」という意味で名前がつけられた塩飽諸島で、粟島や広島、本島などが浮かんでいる。これらの島は塩飽水軍の里として、「人名の島」といわれ知られている。現在、瀬戸内海の島々は、瀬戸内海国際芸術祭で「アートの島々」として有名になっている。これらの島々の山は、瀬戸内海を眺めながらの山歩きが満喫できる。

気候と風土

香川県は、瀬戸内海に属し、季節風の風下側に位置するため、晴天日数が日本で最も多い地域である。春は3月下旬〜4月上旬にかけて、麓の里山はサクラの花でピンク色に染まる。5月は新緑、花や木を見るなら6月ごろもよいだろう。10月下旬〜11月は紅葉。1〜2月には県境の山々で雪山登山が楽しめる。標高1000m近い大滝山にはブナ林が一部残り、大川山(だいせんざん1043m)にはイヌシデの林が残っている。稜線はシイ、カシなどの常緑広葉樹林、中腹はスギやヒノキなどの植林地も多い。

山行上の注意

人があまり入らない山は、藪に悩まされるのが「香川の山」である。送電線の鉄塔が立つ山には保線道があり、登山に利用できる。四国八十八ヶ所をめぐる遍路道も、「四国のみち」として県内のいくつかの山を通っており、標識も整備され、快適に歩ける。しかし、県境から前衛の山々ではイノシシの被害が年々増えている。島嶼部や山間部は過疎化が進み、バス路線も廃止される傾向が続いている。県境の山や平野部の里山でも、ほとんど頂上まで林道などが通じ、車で上がれる山も多い。だが、登山道を荒れさせないためにも、できるだけ山麓より歩いて登りたい。また、マイカーで行く場合も、路肩などに駐車した時に、通行の妨げにならないよう注意したい。


Last modified: Sun, 28 Jan 2018 09:21:46 +0900
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