ホーム > 野山歩き > 高知

高知

四国の南半分は高知県であり、愛媛、徳島県との県境付近には石鎚山と剣山を代表に、四国山地が連綿とつながっている。そして東の剣山から西の石鎚山を結ぶ四国の脊梁山脈は、「四国三郎」の異名をもつ吉野川が横切る横切る部分以外は、概ね1000m以上の高度を保っている。

石鎚山系東部の山

平家平(1692.6m)、寒風山(1763m)、伊予富士(1756m)、瓶ヶ森(1897m)、筒上山(1859.3m)、手箱山(1806.2m)など、人気のある山がかたまっており、高度的にも1900mにとどかんとする高知県の屋根である。本書では、ほかに稲叢山(いなむらやま、1506.2m)、西門山(1496.7m)、三ツ森山などもこのエリアの山として紹介している。この山域は、車道が整備されていることもあって、花の春から紅葉の秋まで、家族連れのハイカーや登山者で賑わっている。

中部の山(嶺北地方)

三傍示山(1157.8m)、笹ヶ峰(1020m)、野地峰(1279.4m)など、1000mをわずかに超える山がつながるほか、白髪山(1470m)、工石山(通称奥工石山、1515.5m)など、一帯の代表的な山もある。佐々連尾山(1404.3m)、大森山(1433m)もこのエリアの山岳だ。概して地味な山が目立つが、山慣れた登山者の興味をそそるやぶ山が多い。

剣山地西部の山

石立山、奥白髪山、三嶺、天狗塚、矢筈山などは、高度もあり、頂上付近のササ原の美しさとコメツツジの群落が特徴的で、最も登山者の多い山域である。登山コースも多く、三嶺周辺には避難小屋がいくつかあり、キャンプ適地もある。剣山から三嶺にかけては四国で唯一ツキノワグマが生息している。もっとも、その数はやっと2桁程度と推測され、絶滅の危機に瀬している。本書では、ほかに高板山、奥神賀山、大ボシ山、梶ヶ森、鉢ヶ森、御在所山などをこのエリアに属する山として紹介している。剣山系の山を除くと、ゴヨウツツジの高板山、星空の梶ヶ森というように、個性的な山が多い。

幡多(はた)地方(高知県西部)の山

三本杭、大黒山など、黒尊の山や篠山などは、幡多地方を代表する山である。篠山一帯は愛媛県側から登られることが多い。人口の少ない県西部にあり、静かな山域である。太平洋に臨む離島の妹背山(いもぜやま)、足摺岬に近い白皇山(しらおさん)、石見寺山、八丁山、五在所ノ峯、鈴ヶ森。添蚯蚓坂(そえみすずさか)のみちなどもこのエリアの山である。照葉樹林に覆われた、高知県の山らしい山が多い。

高知市近郊の山

南嶺(鷲尾山、烏帽子山)、清滝山などは、いずれも裏山、里山という感じの山だが、海や川、市街地の眺め、奥山の展望などが楽しめ、家族ハイキングに適する。ほかには、鉢伏山、小富士山、北山の道、陣ヶ森、工石山、高峰ノ森、などもこのエリアに含めた。いずれも300〜1000m程度の低山である。6月から10月中旬は雑草や蚊が多いので、四国山地に雪が舞うころがおすすめといえる。

中西部の山

横倉山、幡蛇ヶ森、中津明神山、鶴松ヶ森、不入山(いらずやま)、天狗ノ森など、四万十川源流域とその周辺の山である。天狗ノ森周辺は四国カルスト天狗高原ともいわれ、愛媛県側の大野ヶ原にかけて、標高1300m前後のカルスト高原が広がっている。四万十川中流域には1000m未満の山が多いが、登山者にはなじみが薄い。反面、山慣れた登山者におすすめの山が多い。情報を収集し、地図を片手にめぐるのもよい。

東部の山

日本三大美林のひとつ、魚梁瀬杉の産地である千本山や、甚吉森を中心とした魚梁瀬の山である。登る人は少なく、静かな登山が楽しめる。一帯はカモシカが生息する山域でもある。本書ではほかに、西又山、五位ヶ森、東山森林公園、野根山街道をこのエリアで紹介している。全体として植林に覆われた山が多いものの、ウンゼンツツジは東部に多く、ほかではあまり見られない。

山々の四季

いずれの山も、ピークハントだけなら日帰りが可能である。ただし、公共交通機関利用の場合は、登れる山は限られる。特に近年、少なからぬ山間部のバス路線が廃止されて不便になった。マイカー利用がベストである。車が複数台あれば、交差縦走ができる山も多い。また、登山道の整備が万全でない山が多いので、時期によってはかなりの藪漕ぎを強いられることがある。

春か秋が登山適期であり、やぶ山は早春か晩秋が最も登りやすいが、石鎚山系、剣山系以外の山は真冬でも積雪が少ないので、登ろうと思えば四季を通じて登ることができる。

概して雪は西部から早く降りはじめ、天狗高原などは11月や12月中にかなりの積雪をみることがある。石鎚山系では12月から2月にかけて降雪が多い。三嶺あたりでは正月にはほとんど雪がない年もあり、2月ころがピークで、稜線で2mを超える積雪となることもある。もっとも、1980年代半ば以降は暖冬の年が多く、近年は真冬の三嶺で積雪がないことも珍しくない状況である

1500mを超える山では高山植物も見られ、ただのササ原が夏にはちょっとしたお花畑のようになるところもある。

梅雨期と台風に注意

梅雨期や台風の高知県の雨の降り方は尋常ではなく、地質上の特徴もあって、毎年洪水、落石、山崩れなどの自然災害が多発する。天気予報に充分な注意が必要だ。2004年秋の台風で、三嶺の谷筋は大規模な土石流によって様相を一変させたほどである。

大量の降雨時やその直後には、アプローチの林道などで落石に注意を要するほか、土砂崩れなどで通行不能になることがしばしばある。出かける前の情報収集は不可欠である。

服装と用具

やぶ山が多いので、夏でも長袖、長ズボンは必携である。軍手も便利。コースによっては運動靴で歩くこともできるが、軽登山靴の方が好ましい。8月に入ると、一部の渓谷コースではアブが発生する。またブヨなどもいるので、虫対策を講じておくこと。冬でも1000m前後の山なら、アイゼンは不要で、登山靴よりもゴム長靴の方が重宝することもある。

著者紹介

大森義彦:1945年、福井県勝山市に生まれる。中学時代から山野俳諧に親しみ、大学進学後、山岳部に入って岩登りや冬山を始める。近年は登攀活動より、スキー登山・山スキーに重きをおき、他に春の山菜採り、秋のキノコ探しなどが主要な活動。著書に「山岳活動」(ベースボール・マガジン社)、「登山の体をつくる」「健康長寿登山」(東京新聞出版局)などがある。福井大学山岳部、福井クライマーズクラブを経て、高知移住後は高知勤労者山岳会に入り、現在は土佐アルパインクラブ会員。

森田南海男:1943年、高知県いの町に生まれる。社会人になり、高知勤労者山岳会に所属してから本格的に登山活動をはじめ、高知県勤労者山岳連盟の運営を担う。現在は登攀活動からは遠ざかっているが、中高年登山者の支援を中心に活動。朝日ビジュアルシリーズ「週刊・花の百名山」(共著/朝日新聞社)、「岩崎元郎の新日本百名山」(共著/山と渓谷社)、「日本勤労者山岳連盟・登山時報」の「ミニガイド」などを共著。あるぷハイキングクラブに所属。高知市在住。

山岡遵:1951年、高知県いの町生まれ。「おおのたまらん探検隊」を主宰し、南の島に、谷にと、日々怪しげに行動する。著書に山行計画文集「イタドリ」、エッセー「おおのたまらん探検隊」、絵本「かんたろうのびてちじんです〜いすい」「南の島のスオウマン」(飛鳥出版室)がある。

山本卓助:1951年、高知県宿毛市生まれ、高校時代から登山をはじめる。山の花に興味がある。現在、中村勤労者山の会に所属。宿毛市在住。



Last modified: Sat, 27 Jan 2018 21:36:38 +0900
inserted by FC2 system