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京都

京都府は、本州のほぼ中央部に位置し、面積4,612km2、人口約260万の府である。北は日本海と福井県、東は滋賀県と三重県、南は大阪府と奈良県、西は兵庫県と接し、南北に細長い形をしている。地形的には中央部に丹波山地があり、北は丹後半島と舞鶴湾、若狭湾で日本海に面する。北部に丹後山地、福知山盆地、中央部に丹波高地、亀岡盆地、南部に京都盆地があり、標高1,000m以下の低山地帯を形成している。府の面積の75%以上が山地・丘陵地である。

「京都府の山」の特徴は、標高1000mを超す山がなく、緑深い低山が重畳として連なり、歴史と伝説、生活に密着していることがあげられる。また登攀意欲をかき立てたり、人を寄せ付けないような厳しい山はほとんどなく、車を使えば日帰りのできる山々といってよい。そのため近年増えてきている中高年の登山者にとっては、時間と体力に見合った山歩きが楽しめる格好の場になっている。

京都府の山々を紹介するにあたって、本書では京都府の地形に沿って、丹後、丹波(北山を含む)、京都市市街地周辺、南部の4つに分けた。

丹後

丹後半島から丹波との稜線の山々を丹後山域として区切った。依遅ヶ尾山(540m)、太鼓山(683m)、金剛童子山(614m)、高山(702m)、鼓ヶ岳(569m)、磯砂山(661m)、高龍寺ヶ岳(697m)、大江山(832m)連峰(千丈ヶ嶽〜鳩ヶ峰〜鍋塚〜航空観測所)・赤石ヶ岳(736m)、三岳山aka御嶽山(839m)、由良ヶ岳(640m)、多禰寺山(たねじやま556m)、五老岳(301m)、青葉山(693m)の計14座をあげた。

今回新たに紹介した五老岳は、サクラとツツジの名所・共楽公園から舞鶴市の観光のシンボルである五老スカイタワーが建つ山頂を目指して歩いている。そのほかはこれまで紹介してきた山々が多いが、鼓ヶ岳では京都府内の山としては最低山である妙見山に触れ、由良ヶ岳では新しく周回コースを、また大江山連峰では、南端に位置する赤石ヶ岳を、高原歩きとは別に紹介した。

丹波

ここでは、丹後との国境稜線から京都市街地周辺までの山々をとりあげた。特に京都、南丹、綾部3市と京丹波町にまたがる丹波高原(約69,000ha)は、2016(平成28)年3月に国定公園に指定され、保全と利用が課題となっている。

弥仙山(みせんさん664m)、君尾山(582m)、鬼ヶ城(544m)・鳥ヶ岳(からすがたけ537m)、鹿倉山(548m)、長老ヶ岳(917m)、頭巾山(ときんざん871m)、八ヶ峰(800m)、三国峠、三国岳(959m)、ブナノ木峠、小野村割岳、品谷山、片波山、峰床山、皆子山(971m)、雲取山、岩茸山、桟敷ヶ岳(896m)、天童山・飯森山、魚谷山、天ヶ岳、胎金寺山、半国山、地蔵山、三郎ヶ岳、牛松山、行者山の計29座をあげた。

ブナノ木峠、三国峠はともに今回のシリーズで復活させた山だが、2008年発行の改訂版で、発行の直前になって京都大学が管理する芦生研究林への立ち入りが禁止されたため、急ぎ他の山に差し替えたことがあった。それが再び乳輪できるようになったためだ。

今回はじめて紹介する三郎ヶ岳は、「丹波富士」とよばれて人気の牛松山の北に位置しているためか、いまひとつなじみがない山だが、あえてスポットをあててみた。同じく初登場の片波山は、手軽に伏条台杉に触れたり見たりできる山として取り上げた。惟高親王(平安時代前期)ゆかりの桟敷ヶ岳では、その南側の岩茸山を結んで歩くコースを設定した。

魚谷山は、「北山」にかかわった先人の足跡をしのぶ山として改めて位置づけた。北山を含むこの山域は、日本の山岳界をリードしてきたパイオニアたちを育んだ揺籃の地であり、北山で経験した若者らが、北山のその先の、未知なる領域に挑んでいった原点に触れることができる。特筆したいのは、炭焼きの道や生活の場としての道を登山の対象としてとらえ、「北山」と名付けたのが今西錦司(1902〜1992)であるということ。大正時代、15〜16歳の少年らが、京都市街地周辺や南部の山々から30山を選定し「山城30山」と命名して登頂を競い合った活動が、「京都北山からヒマラヤへ」につながっていく。

京都市街地周辺

京都市街地周辺の山として、京都市内を囲む東山、北山、西山の山々を中心に扱った。比叡山(848m)・横高山・永井山、金毘羅山・翠黛山、愛宕山(213m)、朝日峯・峰山、大文字山、ポンポン山(679m)・釈迦岳、天王山(270m)、小塩山(おしおやま、642m)・大暑山、唐櫃越(からつごえ、みすぎ山・沓掛山)の計16座をあげた。wikipediaでは鞍馬山(584m)、小倉山(296m)、衣笠山(201m)の掲載あり。

京都に平安京が定められてから1200年余。歴史の変遷を見続けてきた東山の主峰・比叡山や、西山の主峰・愛宕山などの山々が盆地を取り巻き、登山口やコースの中に古寺や史跡が多いのは古都ならではの魅力であり、世界文化遺産の登録もその重みを増している。

新たに紹介したの唐櫃越と小塩山・大暑山の3座である。前者は旧山陰道の間道であり、軍用路としても古くから知られている。後者は、R9を西へ向かう際、正面に仰ぎ見る山であり、淳和天皇陵を山頂にいただく小塩山には歴史がしのばれる。再登場の朝日峯・峰山は観光地のひとつである高雄から登り、世界遺産の栂尾・高山寺に下る点から、いま注目してよい山だろう。

南部

この山域からは、醍醐山・高塚山・行者ヶ森、大峰山、鷲峰山(じゅぶさん)、甘南備山、三上山、笠置山(288m)の計8座をあげた。

新しく紹介したのは醍醐山・高塚山・行者ヶ森で、醍醐山を中心にした山は、醍醐寺が世界文化遺産の登録を受けたこともあって、近年はよく登られている。三上山は、足をのばして奈良時代の一時期に都が置かれていた恭仁宮(くにきゅう)跡を訪れた。

なだらかな山並みが続くこの山域では、高い山といっても鷲峰山の685mであり、冬季でも歩け、京都市街地周辺と同様、豊富な歴史や伝説に触れることができる。

山々の四季

紹介した山々の登山適期を見ると、多くは春と秋、もしくは春から秋としている。筆者らは、新緑が芽吹き、若葉が山を覆いだすころ、また、紅葉して華やかな装いを誇る時季に山の魅力を一段と感じとることができる点から推奨している。

春:ブナの芽吹く早春では、高山の中腹から山頂まで、頭巾山の尾根の参道尾根コース五合目付近からの上部、八ヶ峰の若丹国境尾根などでは、自然の息吹が肌で感じられる。この時季を象徴するアクラは、醍醐山のふもとの醍醐寺付近、五老岳の共楽公園などがおすすめ。愛宕山では、平地で見ごろが終わったころに最盛期を迎え、登山家は二度愛でることができて楽しい。初夏に咲くシャクナゲは、天ヶ岳のシャクナゲ尾根、長老ヶ岳の斜面がみごとである。

夏:天王山ではアジサイ、峰床山の八丁平ではカキツバタが鮮やかである。ここでは盛夏がすぎるころ、トンボの一種、アキアカネが舞い始める。

秋:紅葉が綾どりをみせるころ、君尾山の大トチではトチの実がなり、2000年以上の生命力を感じとれる。紅葉の名所でなくとも、枯葉の絨毯を踏みしめれば、自然の懐に抱かれた気分になる。晩秋には大江山連峰や三岳山で雲海が眺められる。

冬:1000m以下の山々なので、降雪があってもそれなりの装備があれば歩ける。雪の少ない府南部の山々では好天の日の日溜まりハイクが楽しい。

山行上の注意

京都府の山は、標高1000mに満たない山々ではあるが、低山や里山ほど、山道や林道の錯綜しているところがあり、あなどれない。地図やGPSの持参が必要となる山がある。

防獣フェンスや扉を開けた際には、必ず閉めること。登山者にとっては遊びとして通過する集落だが、住民にとっては野生の動物との戦いの場である。さらに山々の多くは民有地であり、他人の土地を歩かせていただいているということを忘れないでほしい。



Last modified: Sun, 28 Jan 2018 09:07:24 +0900
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