半村 良 |
ジャーナリズムの造語として1980年代の流行作家3人を表現するものに「三村時代」というのがあり、週刊誌の記事にも取り上げられるくらいに一般にも流行したことがある。このことは、その時代の大衆文学における作品傾向の一端を示すものでもあったんだ。
「三村時代」というのは、半村良、森村誠一、西村寿行という現代の流行作家が、3人ともにその名に「村」の字が付いているところから、そういうふうに呼ばれることになっている訳だが、なかなか言い得て妙なるものがある造語になっている。SF作家の半村良、推理作家の森村誠一、そして新冒険物という分野を開拓中の作家西村寿行という具合に、三村時代の3人の作家が、夫々のジャンルの小説制作で活躍しているという状況を眺めると、そのままどのようなタイプの小説が、現在の大衆文学の世界で幅広い読者に受けているかということが、自ずから理解される。
@異端とそしられ、黒悪魔と恐れられながらも、日本史の裏側に陰影のごとく貼りついてきた「鬼道」は、江戸時代に不在の盟主を求め、各派が一斉に跳梁をはじめた。血と淫液にまみれ壮絶な争いが繰り返される。そこへ、超能力を備えた宇宙人の出現!空前のスケールで伝奇小説の頂点をめざす長篇第1部。
@旅への序奏:夏も近づく八十八夜。野にも山にも若葉がしげる。古い歌を口ずさむたびに、亡き母の言葉がよみがえる。「1年のうちで、いちばん美しい季節が八十八夜の頃。あなたの人生の八十八夜を大切に・・・。」加納妙子、23歳。この美しい季節を無駄にすごせない。殺風景なオフィス、平凡な男たち、ありふれたOL生活に別れを告げようと思った。
A春はなやかに:女なら、自分のいちばん美しい季節に、思いっきり咲いてみたい。平凡なOL生活に別れを告げた加納妙子、23歳。夜に流されず、恋にも溺れず、銀座というキャンパスに自分の人生を描いてみようと決意したときから、妙子の新しい季節がはじまる・・・。女の戦場に織り成す人間模様を綴る長篇ロマン。
B夢のはじまり:人生の八十八夜 --- 思いっきり咲いてみたい。平凡なOL生活から、銀座のホステスに転身した加納妙子。美人でしかも新鮮な感じの妙子は、店の人々や客たちから歓迎され、次第に仕事に馴れてゆく。ホステスの生活が順調に進みはじめた頃、政財界の大物である市原弘道が彼女の勤める店にやってくる。そして、客たちのなかで、妙子に好意を抱く男たちがあらわれはじめた。
C風のあした:八十八夜に花を咲かせた妙子は、やがて「クラブ・SS」のママになった。女として、自分の人生を銀座の夜というキャンパスに大きく描いてみたい ---。そんな妙子のまえに、日陰を歩いていても、一種爽やかな夢を抱いた男があらわれる。夜の戦場で、華やかに、そして哀しく咲いてゆく女たちの人間模様を描く半村良の長篇ロマン・全4巻、遂に完結。