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東野圭吾

大阪府大阪市生野区生まれ(本籍は東区玉造・現中央区)の日本の小説家。本名同じ。
★=書下ろし

  1. 放課後(1985年、講談社/1988年、講談社文庫)★
  2. 白馬山荘殺人事件(1986光文社カッパ・ノベルス/90光文社文庫)★
  3. 11文字の殺人(1987光文社カッパ・ノベルス/90光文社文庫)★
  4. 眠りの森(1989講談社/92講談社文庫)★:加賀恭一郎シリーズ2作目
  5. 依頼人の娘(1990年、祥伝社ノン・ノベル)【改題】探偵倶楽部(1996年、祥伝社文庫/2005年、角川文庫)、収録作品:偽装の夜 / 罠の中 / 依頼人の娘 / 探偵の使い方 / 薔薇とナイフ
  6. 変身(1991年、講談社/1993年、講談社ノベルス/1994年、講談社文庫)★
  7. 分身(1993集英社/96集英社文庫)
  8. パラレルワールド・ラブストーリー(1995中央公論社/97中央公論社 C★NOVELS/98講談社文庫)
  9. あの頃僕らはアホでした(1995集英社/98集英社文庫)
  10. 探偵ガリレオ(1998文藝春秋/2002文春文庫):ガリレオシリーズ1作目
  11. 白夜行(1999年、集英社/2002年、集英社文庫)
  12. 予知夢(2000文藝春秋/03文春文庫):ガリレオシリーズ2作目
  13. レイクサイド(2002年 実業之日本社刊 / 2006年 文春文庫), 2014/4/21
  14. トキオ(2002年、講談社)、【改題】時生(2005年、講談社文庫)
  15. 手紙(2003毎日新聞社/06文春文庫)
  16. 殺人の門(2003年 角川書店 / 2006年 角川文庫), 2014/4/18
  17. 容疑者Xの献身(2005年、文藝春秋/2008年、文春文庫)※第134回直木賞受賞作品、ガリレオシリーズ3作目
  18. ダイイング・アイ(2007光文社/11光文社文庫)
  19. さまよう刃(2004朝日新聞社出版本部/08角川文庫)
  20. 赤い指(2006講談社/09講談社文庫):加賀恭一郎シリーズ7作目
  21. 使命と魂のリミット(2006新潮社/10角川文庫)
  22. 夜明けの街で(2007角川書店/10角川文庫)
  23. カッコウの卵は誰のもの(2010光文社)
  24. プラチナデータ(2010年、幻冬舎)
  25. 白銀ジャック(2010実業之日本社文庫)
  26. 真夏の方程式(2011年 文藝春秋 / 2013年 文春文庫)、ガリレオシリーズ6作目
  27. マスカレード・ホテル(2011年、集英社)
  28. 麒麟の翼(2011年、講談社):加賀恭一郎シリーズ9作目
  29. ナミヤ雑貨店の奇蹟(2012年、角川書店)
  30. 夢幻花(2013年 PHP研究所)
  31. 虚像の道化師 ガリレオ7(2012年、文藝春秋)
  32. 禁断の魔術 ガリレオ8(2012年、文藝春秋)
  33. 祈りの幕が下りる時(2013年 講談社)★
  34. 疾風ロンド(2013年 実業之日本社文庫)

白馬山荘殺人事件

この正月休みに読んだ小説の中の2冊目、タイトルに惹かれて読み始めた。実際は実在する白馬山荘ではなく、架空のペンションだったので半分ガッカリ。でも東野圭吾は、この小説が始めての私にとって意外性が充分過ぎるくらい。主人公、原菜穂子(大3)の兄が、「マリア様が、家に帰るのはいつか」というメッセージを残して死んだ。彼の亡くなった部屋が密室状態であったために、警察は自殺として処理するが、得心できない菜穂子は親友、真琴の助力を得て真相解明に乗り出す。真琴は同性の親友であったというのが最初の意外、その後はネタばれになるので記さないが、社会派推理とは別のジャンルのようで、現実的な設定から離れているせいかリズム感よく読んでいける。しかし犯人像と、主人公の原菜穂子の魅力がイマイチ、マザー・グースの唄に謎を掛けながら展開していくところは面白い。普段の私の読書スピードよりも倍以上(5倍くらい)、最後の頁まで飽きずに読めた。あっという間の、始めての東野圭吾であった。(2012/01/18 20:09)

手紙

毎日新聞の日曜版に01年夏〜02年秋にかけて連載、03年毎日新聞社から単行本が刊行、私にとって東野圭吾の2冊目だ。1作目はタイトルに惹かれて読んだ「白馬山荘殺人事件」、それに比して本作は平凡なタイトルなのに第129回直木賞候補作になったという。テーマに据えたのは、犯罪加害者の家族。犯罪が、被害者や加害者だけではなく、その家族にまで及ぼす哀しい現実を見据えた意欲作だ。殺人犯の弟という運命を背負った高校生が成人し、やがて自分の家族を持つにいたるまでの軌跡を、大げさなトリックやサスペンスの要素を用いることなく、真正面から描ききっている。06年11月の松竹・東急系で公開された映画化に合わせて、文春文庫版が刊行。文庫版は1ヶ月で100万部以上を売り上げ、同社最速のミリオンセラーとなり、07年1月に140万部を超えている(私が読んだ文庫版は08年12月の第24刷)。

武島直貴の兄・剛志は、高校3年生の弟が安心して大学へ行けるような金が欲しくて、資産家の老婆の家へ家宅侵入・窃盗を行うが、老婆に見つかり、衝動的に殺してしまう。しかも、弟が好きだった天津甘栗を取りに戻ったために殺人まで犯してしまう。 判決は、懲役15年。 直貴は、事あるごとに「強盗殺人犯の弟」であることが災いし、苦悩する。公表、隠蔽、絶縁、寂寥、哀憐と…。そんな中で、刑務所に入っている兄ととれる唯一のコミュニケーションが、「手紙」だった。主人公・武島直貴は、原作ではバンドを結成するが、映画では漫才コンビを結成する。(2012/02/06 21:16)

使命と魂のリミット

家族の入院中に読んだ東野圭吾の医療サスペンス小説を記してみたい。Wikipediaには、これを原作とした同名のテレビドラマが、2011年にNHK『土曜ドラマスペシャル』枠で放送されたとあったが、残念ながら見逃している。11年前の父の死をきっかけに、心臓外科を目指すことになった女性研修医、氷室夕紀。彼女は父親が心臓手術を受けながら、その最中に命を落とすという過去をもっていた。夕紀は父の死に納得がゆかず、今、母の百合恵がその執刀医、西園との再婚を希望していることに悩んでもいた。西園が勤務する病院の心臓血管外科で研修医として働く夕紀は、多忙な業務に追われながら、亡き父が「人は誰でも使命をもっている」と言った日のことを思い出す。

「隠蔽している医療ミスを公表しないと病院を破壊する」。ある日、そう書かれた脅迫状を発見する夕紀。父が手術で死んだことと、脅迫状の文面にある「医療ミス」には関係があるのか?病院側は医療ミスの存在を否定した。警察の捜査が始まるが、脅迫はエスカレートし、病院はパニックに。患者たちは次々に転院していくが、患者のひとり、クラマ自動車社長、島原総一郎は名医と名高い西園による心臓手術を受けることを強く希望し、病院から一歩も動こうとしない。夕紀は西園から島原の手術へ助手として参加を命じられる。父の死の真相は? 脅迫犯の真の目的とは?全452頁、61章からなるが、終盤に近づくにつれて読むスピード感が加速する。章辺りの頁数は前半部の半分以下となっており、読後の爽快感にも寄与しているような構成だ。

しかし、今まで読んだ東野作品の中ではいささか凡庸な感が否めない。性善説に立ったかのようなきれいな結末、期待していた東野作品の最後のどんでん返しがなかった。狭い範囲での人間関係で繋がりあっているので、小説とはいえ不自然な点が目立った。怪しそうな人物に、結局何もなかった。肩透かしをくらった気分。「西園と夕紀は手術に全力を尽くし、夕紀は医師という仕事の使命感に直面する・・・。」この使命を命題に書かれた作品のため、登場人物の心の軌跡は念入りに書かれている。反面、犯人が犯罪を決行するまでに至ったエピソードが希薄だ。重いテーマの割に一番残念なところだ。サスペンスでなくヒューマンドラマとして読めば、爽快な読後感がある。入院患者にもお薦めの1冊ではないかと思う。(2013/03/06 19:46)

白銀ジャック(2010実業之日本社文庫)

2010年10月5日に実業之日本社から文庫版で発行され、2011年11月17日に単行本化された。発売から1ヶ月余りで100万部を突破している(実業之日本社の発表による)。倉田玲司は、スキー場でリフトやゴンドラなどの運営を行っている。働き始めてから15年。40歳になり、結婚するチャンスもない日々を送っている。そんなある日に、スキー場へ脅迫状が届いた。ゲレンデの下に爆弾を埋めた。という内容のものであった。警察に通報できない状況の中で、犯人は悠々と身代金を奪取してゆく。ゲレンデを乗っ取った犯人の動機はいったいなんなのか。1年前の禁断のゲレンデが鍵をにぎっている。

マスカレード・ホテル

2011年9月に集英社より発刊。2008年12月から2年間「小説すばる誌」にて掲載された。著者の小説家生活25年記念作品第3作として表紙には題「マスカレード」が英語で仮面舞踏会を意味することであることから、アイマスクが描かれている。 なお、舞台となったホテルは日本橋の「ロイヤルパークホテル」とされ、実際同ホテルが取材協力団体として紹介されている。

東京都内で発生した連続予告殺人事件。現場に残された不可解な暗号を解読し、高級ホテル「ホテルコルテシア東京」において次の殺人が起こると予想した警視庁の捜査本部は、捜査員を同ホテルに張り込ませるとともに、従業員として宿泊客の監視に当たらせることにする。捜査一課の刑事・新田浩介は、英語ができる帰国子女であることから、同ホテルのフロントスタッフに扮することになり、教育係となったホテル従業員の女性、山岸尚美とともに連続殺人事件の謎を探る。

東京都内で起きた3件の殺人事件現場に残されたある数列の暗号。その暗号から3つの殺人事件は連続殺人事件として捜査される。捜査本部は、暗号が次の犯行現場を予告するものであることを解読し、次の第4の殺人は「ホテル・コルテシア東京」で起こると推測する。そこで第4の殺人を未然に防ぐ為、潜入捜査の一環として数名の捜査員がホテル内に配置され、ホテルマンに扮した捜査員は、ホテルマンとして不慣れなホテル業務に悪戦苦闘しつつ、不振な宿泊客を監視する事を強いられる。(Wikipedia)

麒麟の翼(2011年、講談社)

加賀恭一郎シリーズの第9作目にあたる。家族のあり方について書いた『赤い指』と人情を描いた『新参者』の双方の要素を取り入れた作品となっている。寒い夜のこと。日本橋の欄干にもたれかかる男を巡査が目撃する。男の胸にはナイフが刺さっていた。どうやら男は死にかけた状態でここまで歩いてきて、力つきたようだ。その後、男は病院で死亡してしまう。

加賀と松宮も参画して事件の捜査が始まる。その中、事件直後に若い不審な男が現場から逃走中にトラックにはねられ、昏睡状態に陥っていることが分かった。「彼が人殺しをするはずがない」と否定する恋人。しかし、彼の持ち物からは被害者が持っていた財布と書類鞄が発見される。そして、被害者とのある関係が浮上したことから、警察は不審な男を犯人と断定し裏付け捜査を進めてしまう。

一方、被害者が部長を務めていた会社で「労災隠し」が発覚し、その責任が被害者にあることが公になる。このことで被害者家族は一転して世間・学校からのバッシングにさらされてしまう。果たして、若い男は真犯人なのか。被害者はなぜ瀕死の状態で日本橋まで歩いてきたのか。加賀と松宮はその真相に挑む。(Wikipedia)

ナミヤ雑貨店の奇蹟

2011年に『小説野性時代』に連載され、2012年3月に角川書店より出版された。第7回中央公論文芸賞受賞作品。舞台でも取り上げられ、2013年に演劇集団キャラメルボックスが5月11日〜6月2日までサンシャイン劇場、6月9日〜16日まで新神戸オリエンタル劇場で上演した。脚本・演出は成井豊。(Wikipedia)
  1. 回答は牛乳箱に
  2. 夜明けにハーモニカ
  3. シビックで朝まで
  4. 黙祷はビートルズで
  5. 空の上から祈りを

夢幻花(2013年 PHP研究所)

大阪の大学院生の蒼太は、父の三回忌で江東区木場の実家に帰っていた。兄の要介は、父の三回忌よりも仕事を優先して出かけてしまっていた。蒼太は、その要介を訪ねて来た秋山梨乃と知り合う。職業を偽ってまで梨乃に接近し、ブログから「黄色い花」の写真を直ちに削除するようにと忠告した要介の真意は何なのか? 梨乃の祖父・周治が殺害された事件に、謎の「黄色い花」が少なからず関係していると考えた蒼太と梨乃は、二人で「黄色い花」の謎と事件の解明に向けて行動を起こす。一方、西荻窪署の早瀬亮介は、息子・裕太の窮地を救ってくれた正義感の強い老人・秋山周治が、所轄の殺人事件の被害者だと知って驚く。手掛かりが少なくとも絶対に迷宮入りにはさせないと、犯人逮捕に向けて一人捜索を続けていた。(Wikipedia)

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虚像の道化師 ガリレオ7

この作品より単行本のカバーがハードカバーからソフトカバーになった。
  1. 幻惑す(まどわす)『別册文藝春秋』第292号(2011年3月号)
  2. 心聴る(きこえる) 『オール讀物』2011年4月号
  3. 偽装う(よそおう) 『オール讀物』2011年7月号
  4. 演技る(えんじる) 『別册文藝春秋』第298号(2012年3月号)

禁断の魔術 ガリレオ8

単行本:2012年10月13日・文藝春秋、シリーズ初の全作書き下ろし作品。著者曰く、前作『虚像の道化師 ガリレオ7』でシリーズの短編は終わりと考えていたが、小説の神様の気まぐれを思い知らされた作品。
  1. 透視す(みとおす)
  2. 曲球る(まがる)
  3. 念波る(おくる)
  4. 猛射つ(うつ)

祈りの幕が下りる時(2013年 講談社)

2013年9月13日に刊行された東野圭吾の長編推理小説で加賀恭一郎シリーズの第10作。シリーズ10作目となる本作では加賀の母親が登場し『卒業』『赤い指』で触れられていた彼女の失踪理由が明かされる他、『新参者』『麒麟の翼』において加賀が配属先の管轄である日本橋に積極的に溶け込もうとしていることや、優秀ながら依然として所轄の刑事のままでいる理由が語られており、本作はシリーズひいては加賀の公私における転換期が描かれる。また東日本大震災発生後の世相が反映され、原発作業員の労働環境に対する問題にも触れている。


Last modified: Wed, 17 Sep 2014 20:15:53 +0900
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