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伊坂幸太郎

千葉県松戸市出身。千葉県立小金高等学校、東北大学法学部卒業後、システムエンジニアとして働くかたわら文学賞に応募、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。その後作家専業となる。宮城県仙台市在住。

  1. ラッシュライフ(2002年7月 新潮ミステリー倶楽部 / 2005年5月 新潮文庫)
  2. フィッシュストーリー(『小説NON』2004年5月号、『小説新潮』2005年10月号等/2007年1月 新潮社/2009年11月 新潮文庫)
  3. 重力ピエロ(2003年4月 新潮社 / 2006年7月 新潮文庫)
  4. アヒルと鴨のコインロッカー(2003年11月 東京創元社 / 2006年12月 創元推理文庫)
  5. グラスホッパー(2004年7月 角川書店 / 2007年6月 角川文庫)
  6. PK(2012年3月 講談社):PK(『群像』2011年5月号)、超人(『群像』2011年7月号)、密使(『NOVA 5』2011年8月5日、河出文庫)
  7. 残り全部バケーション(2012年12月 集英社):残り全部バケーション(2012年12月 集英社)、タキオン作戦(『紡』vol.1)、検問(『小説新潮』2008年7月号 ザ・ベストミステリーズ2009に収録)、小さな兵隊(『小説すばる』2012年10月号)、飛べても8分(単行本書き下ろし)
  8. 死神の浮力(2013年7月 文藝春秋 書き下ろし(冒頭のみ『別冊文藝春秋』2012年1月号に掲載))
  9. 首折り男のための協奏曲(2014年1月 新潮社)

ラッシュライフ(2002)

ラッシュライフは、2002年7月30日に新潮ミステリー倶楽部、2005年5月1日に新潮文庫で発行。私にとって3冊目の伊坂幸太郎、もしかと思ったが予想とおり、作中の戸田が新進女性画家、志奈子も語る。「ラッシュライフは知っているか?」。志奈子の「何ですか?」の問いに対して「曲だよ。そういう名の曲だ。ジャズは聴かないのか」。志奈子は「いえ知りません」と首を振る。作り笑いをする自分に、嫌悪感が走る。「コルトレーンの名演だ。"Lush Life"。豊潤な人生。いいじゃないか。私は、今この瞬間、別の場所で同時に生きている誰よりも、豊かな人生を送っている。そう言い切れる」幸福そうな笑顔だった。

本作は、伊坂さんが世の中に注目されるきっかけとなった作品のようだ。 カバーの説明によれば、戸田と志奈子についての言及はなくて、次のとおりである。泥棒を生業とする男(黒澤)は新たなカモを物色する。父に自殺された青年(河原崎)は新興宗教団体神に憧れる。女性カウンセラー(京子)は不倫相手(青山)との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男(豊田)は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場・・・。暴走する4つの物語。交錯する10以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがるとあった。この4人の1人称が軽妙なタッチで、「メビウスの輪」を紡いでいく。ネタばれになるので、これ以上は云わない。(2012/04/03 20:56)

アヒルと鴨のコインロッカー(2003)

名前に惹かれて読み見終えた訳ではないが、伊坂幸太郎さんの5本目の長編だそうだ。2003年11月、東京創元社の叢書ミステリ・フロンティアの第1回配本作品として刊行。2006年12月、創元推理文庫に収録された。そして、第25回吉川英治文学新人賞受賞作とWikipediaにあった。私にとって最初の伊坂さんは「グラスホッパー」だが、鈴木、クジラ、セミの3人が、さながらダンモのフォー・バース・チェンジのようにどんどん切り替わっていく。だけど、「時間的なトリック、意外性はない。」と記した。本作はその1年前なのに払拭している?!生年月日から逆算すると、この作品当時の伊坂さんは30代前半だと思うのだけど、ご自分よりも二周りも上の世代なんかも描いている。やはり、ストーリーテラーとしての才能を、生まれながらに与えられた天才なんだろうと思う。

大学入学のために引っ越してきたアパートで、最初に出会ったのは黒猫、次が悪魔めいた長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。標的は――たった一冊の広辞苑。 僕は訪問販売の口車に乗せられ、危うく数十万円の教材を買いそうになった実績を持っているが、書店強盗は訪問販売とは話が違う。しかし決行の夜、あろうことか僕はモデルガンを持って、書店の裏口に立ってしまったのだ!四散した断片が描き出す物語の全体像とは?注目の気鋭による清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。(2007年6月、8版)(2012/03/27 20:21)

グラスホッパー(2004)

体は縦形にやや平たい筒形で、褐色型と緑色型の両型をもつものもあるが、概して生息環境の背地に同調する同色性を示すものが多い。頭部は大きく、縦卵形またはショウリョウバッタAcrida chinereaのように体の前方に突き出る円錐体形で、触角は糸状が普通であるが、扁平でやや幅広になるものもある。はねにはいろいろな退化傾向がみられ、まったく無翅のこともあるようだ。前・中肢は歩行のための脚であるが、後肢は腿節が太くかつ伸長し、力強い跳躍肢となる。なお、脚のふ節はいずれも三節からなる。大多数は草原の生活者であるが、個体の密度が高まってくると、虫自体の性質や形態が変化し、群集性が強まって、集団で行動するようになり、群飛する、いわゆる飛蝗となり、農作物を食い荒らす結果となる。

作者はこの生態を捉えて表題としたのだろう。最近、読んだ「メビウスの時の刻」(船戸与一)のように、複数の一人称によって展開される。本作では、鈴木、クジラ、セミの3人だ。ダンモのフォー・バース・チェンジのようにどんどん切り替わっていくが、船戸のような時間的なトリック、意外性はない。冒頭、鈴木の学生時代に聞いた言葉、「これだけ個体と個体が接近して、生活する動物は珍しいね。人間というのは哺乳類じゃなくて、むしろ虫に近いんだ。」と、提示される。この後もあったかも知れないが数行だろう。カバーの内容紹介では、分類不能の「殺し屋」小説ということだったけど、伊坂作品始めての私にとっては気軽に読める作品だったと思う。クライマックスは期待していた割りにあっけなかったが・・・。(2012/03/17 20:30)

死神の浮力(2013)

7日のあいだ対象の人間を観察し、「可」か「見送り」かを判定。「可」の場合8日目にその人間の死を見届ける存在、死神。死神の千葉は、娘を殺した犯人を追う夫婦の敵討ちに参加するが…。【「TRC MARC」の商品解説】

ベストセラー「死神の精度」 から8年。7日間のあいだ人を観察し「可」か「見送り」かを判定する死神・千葉が帰ってきました。今回のターゲットは山野辺遼。彼は幼い娘を凶悪犯に殺されており、しかも、殺人犯・本城には無罪の判定が下されていた。山野辺を嘲笑うような行為を繰り返す本城に対して、山野辺夫妻と死神・千葉による、復讐劇の幕が切って落とされた!(13/11/21, e-hon)

外部リンク(2014/8/14):



Last modified: Thu, 14 Aug 2014 08:43:56 +0900
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