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桐野夏生

石川県金沢市生まれの小説家。別のペンネーム野原野枝実(のばら のえみ)や桐野夏子の名でロマンス小説、ジュニア小説のほか、森園みるくのレディースコミック原作も手がけている。妊娠中に友人に誘われ、ロマンス小説を書いて応募し佳作当選。以後、小説を書くのが面白くなって書き続けたという。ミステリー小説第一作として応募した『顔に降りかかる雨』で第39回江戸川乱歩賞を受賞。ハードボイルドを得意とし、新宿歌舞伎町を舞台にした女性探偵、村野ミロのシリーズで独自の境地を開く。また、『OUT』では平凡なパート主婦の仲間が犯罪にのめりこんでいくプロセスを克明に描いて評判を呼び、日本での出版7年後に米国エドガー賞にノミネートされ、国際的にも評価が高い。

天使に見捨てられた夜 (1994年講談社)

先週、箱根で会議があって出張、新幹線の中で読み終えた。行くときは夢中になって読んでいたせいか、東京駅の乗換えで気づかず駅員の「車庫に行きますよ?!」の一言で慌てて降りてしまった。前作の「顔に降りかかる雨」の巻末解説(香山二三郎)では、日本ミステリー界に3F現象或いは4F現象という言葉が出回るようになって久しいとあった。即ち作者、主人公、読者の三者が何れも女性、femaleというのが3Fで、日本のようにそこに翻訳者が加わると4F。つまり作り手から読み手に至るまで女性だらけ、という近年のミステリーブームを指した言葉だ。

本作の解説(松浦理英子)では、ミステリーのジャンルにおいて、80年代以降、女性探偵を主人公に主人公にした作品を書く女性作者が続々と登場したのも、そうした今日的な現象のうちに含まれるわけだが、このジャンルこそ、知性もあれば精神力を備えた現代風の魅力的な女性像を造形するのに打ってつけの舞台であって、実際これほど真正面からの探求が行われているジャンルは他にないようだと云う。前作では、気にしないと思えばさほど気にしなくても済む、村野ミロの生身の部分が、本作では見過ごしようのない形描かれている。読者の支持を失いかねないほどだ。失敗を犯してからのミロの動きに注目、全体的にみれば、やはりミロはカッコいい女性なんだと思う。明日の出張の新幹線の中では、「ローズガーデン(桐野夏生)」かな(2012/05/14 21:28)。

ポリティコン(2011年文藝春秋)

プラトンの弟子で、プラトンと並ぶ古代ギリシア最大の哲学者。師プラトンが超感覚的なイデアの世界を重んじたのに対して、アリストテレスは人間に卑近な感覚される事物を重んじ、これを支配する諸原因の認識を求める現実主義の立場をとった。プラトンの哲学の深い影響から出発し、アリストテレスは壮年時からしだいに独自の体系を築き上げていった。両者の思索の関連、ことに若きアリストテレスの哲学形成の過程については、資料の制約もあって今日でも多くの謎を残し(初期アカデメイアの謎)、専門研究者間の論争の的になっている。

特に政治学の分野では、人間は国家的動物(ゾーオン・ポリティコン、Zoon politikon)である。公共の生活のうちに人間の善は実現される。それゆえ、倫理学は政治学の一部をなすと考えられている。中産階級を中心にして、治められるものが交代して治めるものとなるところに実現されうる最善の国制があるとした政体論は、穏健な民主主義の優れた理論づけを与えたものといえる(Thu, 11 Oct 2012 19:38:49)。

上巻:大正時代、東北の寒村に芸術家たちが創ったユートピア「唯腕村」。1997年3月、村の後継者・東一はこの村で美少女マヤと出会った。父親は失踪、母親は中国で行方不明になったマヤは、母親の恋人だった北田という謎の人物の「娘」として、外国人妻とともにこの村に流れ着いたのだった。自らの王国「唯腕村」に囚われた男と、家族もなく国と国の狭間からこぼれ落ちた女は、愛し合い憎み合い、運命を交錯させる。過疎、高齢化、農業破綻、食品偽装、外国人妻、脱北者、国境?東アジアをこの十数年間に襲った波は、いやおうなく日本の片隅の村を呑み込んでいった。ユートピアはいつしかディストピアへ。今の日本のありのままの姿を、著者が5年の歳月をかけて猫き尽くした渾身の長編小説。

下巻:唯腕村理事長となった東一は、村を立て直すために怪しげな男からカネを借りて新ビジネスを始める。しかし、村人の理解は得られず、東一の孤独は深まる一方だった。女に逃げ場を求める東一は、大学進学の費用提供を条件に高校生のマヤと愛人契約を結んでしまう。金銭でつながった二人だが、東一の心の渇きは一層激しくなり、思いがけない行為で関係を断ち切る。それから10年、横浜の野毛で暮らしていたマヤのもとに、父親代わりだった北田が危篤状態だという連絡が入る。帰郷したマヤは、農業ビジネスマンとして成功した東一と運命の再会をした。満たされぬ二つの魂に待ち受けるのは、破滅か、新天地か。週刊文春と別冊文藝春秋の連載が融合されて生まれた傑作小説、堂々の完結。

だから荒野(2013年毎日新聞社)

46歳の誕生日。身勝手な夫や息子たちと決別し、主婦・朋美は1200キロの旅路へ―「家族」という荒野を生きる孤独と希望を描き切った桐野文学の最高峰!【「BOOK」データベースの商品解説】

46歳の誕生日。身勝手な夫や息子たちと決別し、主婦・朋美は1200キロの旅路へ?。「家族」という荒野を生きる孤独と希望を描く。『毎日新聞』連載を大幅に加筆・修正して単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】

外部リンク(2014/8/8):



Last modified: Fri, 08 Aug 2014 15:17:40 +0900
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