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Last modified: Sun Feb 07 21:18:36 1999
■ その作風・3つの系統
- エンターティンメント
- 耽美的、怪奇趣味:刺青殺人事件(1948)、能面殺人事件(1949.4)、妖婦の宿(1949.5)、断層(1959)
- 名探偵もの:
- 歴史ミステリー
- 社会派推理
- 経済もの:人蟻(1959)、白昼の死角(1959)
- 法廷もの:破壊裁判(1961)、誘拐(1961)
さまざまな傾向の作品に、天才的な法医学者神津恭介、柔道、空手等の達人大前田英策、弁護士百谷泉一郎と明子夫人のコンビ、一見ぱっとしないようで卓抜な推理力をもつ近松茂道検事、もう一人まったく異なったタイプの霧島三郎検事、風変わりな墨野瑯人等、それぞれの作品の傾向にふさわしい名探偵が代わる代わる登場して、推理の楽しさを満喫させてくれる。
- 神津恭介シリーズ
- 「ぐず茂」こと、検事・近松茂春シリーズ
- 百谷泉一郎シリーズ
- 霧島三郎検事シリーズ
- 検事霧島三郎(1964、44歳の作品)
- 密告者(1965)
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■ 角川文庫
- 人蟻(1959.2.28〜9.12 週刊東京)
安い原料から、莫大な利益を生み出す砂糖。その魅惑的な甘い汁に、蟻のようにすいよせられる人間の群れ。巨大な利益が悪をひきつけ、そこに、”犯罪”が芽生える。資本金何億かの精糖会社の一大秘密があばかれたのは、弁護士・百谷泉一郎の正義に燃える血と刃物のように鋭い推理の冴えがあったからだ。政治と癒着した、薄汚れた経済界の隠された秘密に挑戦する高木彬光の本格経済推理の決定版!
◇作品の中の事件は1958年の秋に起こったという設定で、列車時刻表とか株価の動きは、勿論当時のものに拠っている。運転時間6:50のビジネス特急「こだま」が登場したのは1958.11.1だから、その直後の事件であり、東海道新幹線開通の6年前ということになる。
- 成吉思汗(ジンギスカン)の秘密
作家生活10年に及ぶ1958年頃から、さしもの高木彬光も、ようやく作風に一つの行き詰まりを感じ始める。そこで彼は、「成吉思汗の秘密」を発表して、歴史推理の分野を開拓すると同時に、この作品を最後に神津恭介をひとまず引退させる決意を固めるのである。東大出の天才型法医学者神津恭介が活躍。(1958)
- 刺青殺人事件
妖艶怪奇の香り高い謎解きの本格推理長編。(1948年デビュー作)
- 誘拐
未開拓とされていた法廷推理に新しい歴史を切り開く(1961)
- 破戒裁判
未開拓とされていた法廷推理に新しい歴史を切り開く(1961)
- 検事霧島三郎
少壮検事、霧島三郎の婚約者恭子の父、竜田弁護士に殺人の嫌疑がかけられた!彼の妾宅で愛人が殺され、現場にヘロインが発見されたのだ。続いて起きる竜田弁護士の失踪。背後にのびる警察の捜査の手・・・。苦境に追い込まれた三郎は、検事職を辞職覚悟で捜査に乗り出した。
事件の背後に潜む、暴力団の麻薬ルートと政界の黒幕との癒着。続発する第2、第3の殺人事件。父を求めて苦悩する恭子に仕掛けられた悪魔の罠。スリルとサスペンスを基底とし、人間霧島三郎を描き上げた推理ロマンの傑作。(1964年、44歳の作品)
- 人形はなぜ殺される(1955)
衆人環境の中で、鍵のかかったガラス箱から蒸発してしまった”人形の首”。その直後、突発した殺人事件の現場には、無残な首なし死体と行方不明の人形の首が転がっていた。名探偵、神津恭介への悪魔からの挑戦状か。殺人を犯す前に、必ず残酷な人形劇で殺人予告をするという大胆不敵な凶悪犯の正体は?復讐に燃える犯人の陰惨な罠、奇怪な謎に挑む、本格推理小説の傑作!
- 死神の座(1960)
星の運行が人間生活にまで、影響を及ぼすものだろうか。−−−軽井沢の一流ホテルで起こったむごたらしい殺人事件!死体の胸には奇妙な”さそり座”のマークがきざまれ、顔には濃硫酸がかけられて、容貌を想像することもむずかしい残虐な殺しかただ。占星術の<死神の座>の法則を暗示するこの不吉な事件を解く鍵はどこに?本格推理小説の最高傑作。
- ゼロの蜜月(1965)
- 密告者(1965)
金が生み出す”力”には、誰も理性が狂う。大金を得ようとあせれば、そこには、打算と背信が渦を巻く。−−−株価は低迷していた。業界の不振と、架空の客の口座をつくり株を売買(手張り)して、穴をあけた瀬川繁夫は、会社を首になった。転落への暗い影がしみつきはじめた。そのころ、ふと出会った昔の女が紹介してくれた小さな商事会社。だが、それはスパイ会社の隠れ蓑だった!本格推理小説、検事霧島三郎シリーズ第2弾。
- 黒白の虹
「兜町で10年に1人の大勝負師」といわれる西沢貞彦が目をつけた商品。それは”安い高性能なカラーテレビ」だった。開発に乗り出した会社の株を一手に買い占め、株価を急騰させた彼の作戦は見事に成功。だが突然起こった殺人事件で、彼は容疑者として逮捕されてしまった・・・。著者会心の本格推理小説。近松茂道検事が登場、軍隊経験あがり、40代。「野牛のような風貌の、眼だけが鋭い」謹厳実直型で「能弁ぞろいの検事にはめずらしい訥々とした話ぶり」でグズ茂とあだ名される。(1963年)
- 大予言(ノストラダムス)の秘密
- 肌色の虹
- 失踪(原題「殺人への退場」、1962年)
- 死を開く扉(1957年)
- 都会の狼(1966年)
- 追跡(原題「暗黒星雲」、1962年)
- わが一高時代の犯罪
東大出の天才型法医学者神津恭介が活躍。(1951年)
- 捜査検事
- 炎の女(1967年)
- 連合艦隊ついに勝つ
- 二幕半の殺人
- 灰の女(1970年)
- 脅迫
- 白昼の死角
この小説は、天才的な詐欺師・鶴岡七郎の”犯罪の記録”である。彼は、冷酷すぎるほど緻密な計算のもとに、堂々と犯罪を犯した”現代のラスコーリニコフ”(ドストエフスキーの「罪と罰」の主人公)である。同じ手口は二度と使わず、彼が発案したあらゆる詐欺の手口がここに集結されている。
一見、がんじがらめに見える法網にも、必ず盲点と死角がある。奸智にたけた鶴岡七郎の策に乗せられ、共犯者の汚名からのがれようと自殺した者もあった。彼を諌めた妻や愛人の抗議の自殺にも、裏世界で幅を利かすやくざの恐喝、凶器にも動じなかった。そして彼は、ついに、警察の追求の手からも逃げおおせた!これほどの<悪党小説>が他にあるだろうか。著者が法支配の限界に挑戦した最高傑作長編推理。(1959.5.1〜1960.4.22 週刊スリラー、1960.6 単行本)
- 死美人劇場
- 黒白の囮
ベスト5に入る傑作(1967年)
- 花の賭
- 霧の罠(1968年)
- 追われる刑事(1969年)
- 裂けた視覚
伊藤裕子が就職した会社は、妙に胡散臭い会社だった。外国系の一流企業の名をかたり、事業内容にも明らかに不審な点があった。しかも、社長には精神病の病歴があり、詐欺の前科まであった。<大詐欺事件に発展するかもしれない?>裕子の恋人の週刊誌記者佐々木進一の勘が不幸にも的中した。裕子が乗用車の中で服毒死体となって発見されたのだ。だが、服毒の際に用いたはずのコップや空き瓶が車中から消失している。警察は殺人事件として捜査を始めた。−−−<死神に憑かれた男>佐々木進一の周囲で起こった複雑な連鎖殺人事件の端緒はこうして開かれた!著者会心の新形式の本格ミステリー。(1969.5〜12 小説宝石連載)
◇中短編3部作の構成となっており、「虚像の死角」、「魔の偶像」、「勝負の映像」と続く。いわゆる連続推理(氏は連鎖推理小説と呼んでほしいと言っている)の形式で、それを続けて読んだ場合に、長編としての構成と展開をもっている作品は、高木が長年ねらっていた1つのスタイルのようである。全篇通じて、佐々木が調べ、山西が論理的にことの真相推理するという。この点優れたアームチェア・デテクティブといえよう。
- 断層(1959年)
- ハスキル人
SF長編(1957年)
- 影なき女(1950年)
- 帝国の死角
第1部:天皇の密使、第2部:神々の黄昏の2部からなり、高木推理小説の集大成といえる労作。(1972年)
- 黄金の鍵(1970年)
- 法廷の魔女(原題「魔女裁判」、1965年)
- 邪教の神
- 羽衣の女(1957年)
- 波止場の捜査検事(1963年)
- 神曲地獄篇
高木としては珍しいドキュメンタリー・ドラマ。(1973年)
- 偽装工作
- 最後の自白
マンションの一室で、男が撲殺されていた。被害者は、エロ事と恐喝を商売としていた。犯人はすぐに割れ、あっけなく事件は解決した・・・。だがその直後、次々と真犯人が名乗り出てきたのだ。多すぎる容疑者からただ一人の本ボシを、どう割り出すか、一転、捜査は厚い壁に突き当たった。石橋を叩いても渡らぬ慎重さから”グズ茂”のあだ名を持つ近松茂道検事がこの謎に挑戦した。表題作「最後の自白」(別冊宝石 1967年新春号)ほか、近松検事の名推理が冴える五篇を収録。
- 「パイプの首」(1966年8月 別冊宝石)、殺人現場に落ちていたパイプのボウルから、死体処理のトリックを解明する
- 「影の男」(「犯人だけが知っている」を改題、1966年3・4月 宝石)、神港興行の社長で巨額の資本家藤本勇造が臨終を迎えようとしていたとき、専務の謙一が鍵のかかった書斎で、絞殺死体となって発見されるという密室殺人のあと、続いて第二の殺人が起こるという設定。
- 「愛と死のたわむれ」(オール読物 1961年7月号)、激しい情熱に生きた女の肖像を描いた異色作。
- 「かまきりの情熱」(小説現代 1967年3月号)、倒叙推理小説の形式を取っている。
- 「消えた死体」(推理ストーリー 1966年8月号)、殺人現場をガラスの窓越しに目撃したという若い男の知らせで警官がアパートに駆けつけると問題の部屋には死体など影も形もない。ところが今度は同じアパートの別の部屋に女の絞殺死体が・・・。
これらの連作短編は、いずれも高木が愛着を持つ神戸を背景にしている。とくに夜の六甲ドライブウェーを舞台にした「パイプの首」などにはそういう風物が背景として生かされており、人間味のある近松検事野肖像とあいまって、独特の雰囲気を醸し出している。
- 悪魔の火祭(1958年)
- ミイラ志願
- 一、二、三−−−死(1974年)
- 幻の悪魔(1974年)
- 女か虎か
- 能面殺人事件(1949年4月 宝石)
ある夏の夜、千鶴井(ちづい)家の当主、家次郎が寝室に置かれた安楽椅子の上で急死した。死因は心臓麻痺であった。現場は完全な密室情態で、死体の傍には呪いを宿していると言い伝えられる鬼女の能面が残されていた。しかもその直後、葬儀屋が、依頼主のわからぬ三つの棺を届けてきたのだ。これは連続殺人を予告するメッセージか?狂気と醜い人間の欲望が渦巻く一族に次々と起こる惨劇は、巨額の財産を狙う者の犯行か、それとも復讐か?S25探検作家クラブ賞(日本推理作家協会の前身)受賞の、本格推理の代表傑作。
- 改稿新版 耶麻台国の秘密(1973)
- 蛇神様
- 大東京四谷怪談(1976)
- 殺意(1952)
- 呪縛の家(1949.6〜 宝石)
- 狐の密室
- 大予言者の秘密
- 神秘の扉
- 妖婦の宿(1949.5 宝石)
- 巨城の破片
- 刺青物語
- 白魔の歌
- 魔弾の射手
- 魔の首飾り
- 二十三歳の赤ん坊
- 顔のない女
- 白雪姫
- 恋は魔術師
■アームチェア・ディテクティブとは
いわゆる安楽椅子探偵のことで、自分では直接殺人現場に行ったり、捜査活動をせずに、他の内容を聞いて推理する名探偵のことをいう。
アームチェア・ディテクティブの作例としては、オルツイ男爵夫人の「隅の老人」やジェイムズ・ヤフィの「ブロンズのママ」シリーズが有名で、「隅の老人」は、ロンドンの喫茶店の片隅で、イヴニング・オブザーバーの婦人記者を相手に名推理を展開するし、”ママ”のほうは、週に一度刑事の息子が嫁を連れて夕食にやって来て話す難事件を見事に解決するという設定だ。いずれも連作短編でこの点は近松検事シリーズも同じ、刑事たちの捜査経過を聞いて近松検事が鮮やかな推理を展開するというのがほぼ共通した形式だ。もっとも近松検事は関係者と会ったり容疑者を訊問したりもするのだから、純粋な意味のアームチェア・ディテクティブではなく、アガサ・クリスティーのミス・マーブルを一種の安楽椅子探偵というくらいの意味だが、とにかく検事という職業を巧みに使ったユニークな探偵役になっている。
■ 高木楸光の年譜
- T 9(1920) 青森に生まれる。
- S18(1943) 東京大学冶金科卒業。中島飛行機(富士重工の前身)に入社。
- S23(1948) 処女作「刺青殺人事件」で故江戸川乱歩に激賞され文壇にデビュー。
- S25(1950) 「能面殺人事件」で第3回日本探偵作家クラブ賞受賞。占いの世界にも造詣が深い。
■ リンク
- 懶惰の城 tau-puppis@geocities.co.jp
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