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高嶋哲夫

1949年、岡山県玉野市生まれ。慶應義塾大学工学部卒業、大学院修士課程修了。日本原子力研究所研究員を経て、カリフォルニア大学に留学。帰国して学習塾を経営しつつ、作家業をこなす。2007年に『ミッドナイト・イーグル』が映画化された(出演:大沢たかお、竹内結子、玉木宏、吉田栄作)。

スピカ原発占拠

ミッドナイトイーグルの原作を知ってから、その作者の本に興味をもちましたので表題作を読んでみました。日本海沿岸に建設されたばかりの世界最大(本当はこんな大きな原発なんてないのかも知れません)の原発が、謎のテロ集団に占拠されます。放射性ガス放出の時が迫ります――苦悩する日本政府、テロリストの真の目的は何なのでしょうか?地球規模の災難を眼前に科学者同士の対決がクライマックスを迎えます!元・原研研究員の大型新人作家として「イントゥルーダー」でサントリーミステリー大賞・読者賞をゲットした著者の渾身の受賞第1作、待望の文庫化(ブックカバー裏書)!(01年宝島社文庫第1刷、07年同第4刷)

ミッドナイト・イーグル

この日曜、あいにくの天候と風邪気味だったせいもあって、表題の映画を一人で観に行ってきた。山中での撮影が原作での描写に比べれば、若干リアリティに欠ける面が否めなかったものの充分に感動した。何が良いかと云えば、挫折を抱えながらも必死に生きようとする主人公たちの姿が良い。かって世界中の戦場を駆け巡り、生と死の現実を写し続けたカメラマンの主人公、西崎優二(大沢たかお)の回想シーンから始まった。戦場である出来事に深く傷つき、追い討ちをかけるように妻も失ってしまう。病気の妻を顧みなかったことで自分を責め、今は山中で一人、星空へ向けてシャッターを切り刻む。共演の有沢慶子(竹内結子、99年ころのNHK朝の連ドラ主人公)、落合(玉木宏)が、この映画を盛り上げている。ハリウッド映画に比べれば作品の予算が違い、邦画では物足りない部分があるかも知れないが、出演者の飾らない姿がここにはあると思う。全体的に、人間ドラマ的に観れば、心に響く映画になっていると思うが如何?!

ペトロバグ

高嶋哲夫、私にとって3冊目です!彼の作品には凡そ3つの読みどころがあるとは、2冊目に読んだ解説の郷原宏氏の言葉です。1つは勿論、内部情報小説的な興味で、今回も石油市場の裏情報が満載でありました。2つ目は、危機管理小説的な興味。3つ目は、主人公の個性的な魅力かと思います。天才学者、山之内明が発明した奇跡の石油生成菌ペトロバグ。世界の石油市場を根本から覆す大発明に脅威を感じた国際石油資本とOPECは、双方とも山之内拉致、殺害とペトロバグ略奪の指令を発しました。だけど、ペトロバグは恐怖の殺人生物兵器であることが判明、山之内は暗殺者に追われながら重大な決意を固めます(01年宝島社、07年11月文春文庫)。

主な登場人物
 山之内明:「林野微生物研究所・第7セクター」室長。石油生成菌ペトロバグの生みの親。
 相原由美子:第7セクター研究員。
 林野史郎:「林野微生物研究所」会長。山之内の理解者。
 林野和平:「林野微生物研究所」所長。林野史郎の息子。
 近藤将文:東日新聞記者。

 第7章171頁で、林野史郎と山之内明の2人が、池袋北口の裏通りにある居酒屋に入る下りがあります。薄汚れた居酒屋の雰囲気が、この2人には何かしっくりときません。林野史郎が、黙って杯に口を運びました。
 「先生、もういい加減にご自分を許したらどうです。先生を見ていると、つらくなることがある。」
 突然、あらたまった調子で言った。
 「こう考えたらどうです。人にはそれぞれ、神様が与えた使命というものがある。我々はそれに向かって全力を尽くすだけです。神様は先生に使命をお与えになった。だから、あのひどい事故でも生き残ることができた。」と・・・。

具体的な内容はネタバレになるので、この後は触れませnが、傷つきやすい魂とその良き理解者がいて、人生の神秘さを思いのままに描いています



Last modified: Sun, 19 Aug 2012 18:19:58 +0900
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