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ハンク・モブレー
ハンク・モブレーまたはモブレイ(Hank Mobley, 1930年7月7日 ? 1986年5月30日)は、アメリカ合衆国のテナー・サクソフォン奏者で作曲家。ハード・バップやソウル・ジャズのジャンルで活躍した。レナード・フェザーによって「テナー・サクソフォンのミドル級チャンピオン」と呼ばれたことで知られる。この隠喩は、モブレーが平凡であるかのような印象を持たせかねないが、実際にはジョン・コルトレーンほど鋭くもなければスタン・ゲッツほど円やかでもない音色を指している。付け加えると、モブレーの音楽様式は、とりわけソニー・ロリンズやコルトレーンと比較すると明らかなように、落ち着きがあって精妙かつ歌謡的であり、ジュニア・クックやジョージ・コールマン、ジョー・ヘンダーソンらに影響を与えたものの、その才能が識者に完全に評価されるには、モブレーの歿後を俟たねばならなかった。ジョージア州(住民の約27%が黒人)のイーストマンに生まれるが、ニュージャージー州ニューアーク近郊のエリザベスに育った。初期の活動においてディジー・ガレスピーやマックス・ローチと共演する。アート・ブレイキーやホレス・シルヴァー、ダグ・ワトキンスおよびケニー・ドーハムと並んで、ハード・バップの画期的なセッションの一つに参加した。その成果は、アルバム『ホレス・シルヴァー・アンド・ジャズ・メッセンジャーズ』として発表されており、モブレーのよりブルージーな抒情性と、シルヴァーのファンキーなアプローチとのお蔭で、クール・ジャズの取り澄ました古典性とは対極にある。「ジャズ・メッセンジャーズ」が1956年に分裂すると、暫くはシルヴァーと演奏を続けたが、数年後にはブレイキーと再び共演するようになり、1960年代初頭のモブレーのアルバムにもブレイキーが出演した。
1960年代は主にバンドリーダーを務め、1955年から1970年にかけてブルー・ノート・レーベルに20枚以上のアルバムを録音した。1960年の『ソウル・ステーション』と『ロール・コール』は、代表作のアルバムである。最も重要なハード・バップの演奏家、例えばグラント・グリーンやフレディ・ハバード、ソニー・クラーク、ウィントン・ケリー、フィリー・ジョー・ジョーンズらと共演し、トランペッターのリー・モーガンとは、とりわけ実り豊かな協力関係を築いた。モブレーは、興味深いコード進行や、独奏者の見せ場を繰り広げたことにより、ハード・バップの時代の最も偉大な、独創的な作曲家の一人として広く認められている。(Wikipedia)
- Horace Silver / & The Jazz Messengers (1954/11/13, 1955/2/6-5)
- Quartet (1955/3/27)
- Kenny Dorham / Afro Cuban (1955/3/29)
- Jay Jay Johnson / The eminent, Vol. 2 (1955/6/6)
- The Jazz Messengers at The Cafe Bohemia Vol.1 (1955/11/11)
- The Jazz Messengers at The Cafe Bohemia Vol.2 (1955/11/23)
- The Jazz Message of Hank Mobley (1956/1/30, 2/8)
- Art Blakey / Nica's Dream (1956/4/5, 5/10)
- Elmo Hope / Informal Jazz (1956)
- Mobley's Message (1956/7/20)
- The Jazz Message of Hank Mobley Vol.2 (1956/7/23, 11/7)
- Mobley's Second Message (1956/7/27)
- Jackie McLean / 4, 5 & 6 (1956/7/13, 21)
- Tenor Conclave (1956/9/7)
- Lee Morgan / Introducing Lee Morgan (1956/11/5)
- Horace Silver / Six Pieces of Silver (1956/11/10)
- Art Farmer / Farmer's Market (1956/11/23)
- Hank Mobley Sextet (1956/11/25)
- Lee Morgan / S[]xtet (1956/12/2)
- Donald Byrd / The Prestige All Stars All Night Long (1956/12/28)
- Hank Mobley and His All Stars (1957/1/13)
- Jimmy Smith / A Date with Jimmy Smith Vol.1 (1957/1/11, 13)
- Hank Mobley Quintet (1957/3/9)
- Hank (1957/4/21)
- Hank Mobley (1957/6/23)
- Curtis Fuller / The Opener (1957/7/16)
- Sony Clark / Dial S For Sonny (1957/7/21)
- Sonny Clark / Sonny's Crib (1957/10/9)
- Peckin' Time (1958/2/9)
- Art Blakey / At The Jazz Corner of The World Vol.1 (1959/4/15)
- Soul Station (1960/2/7)
- Freddie Hubbard / Goin'Up (1960/11/6)
- Roll Call (1960/11/13)
- Miles Daivis / Someday My Prince Will Come (1961/3/7, 20-21)
- Workout (1961/3/26)
- Miles Daivis / at Carnegie Hall (1961/5/19)
- Donald Byrd / A New Perspective (1963/1/12)
- TurnAround (1963/3/7)
- No Room For Squares (1963/10/2)
- Lee Morgan / The Sidewinder (1963/11/21)
- Dippin' (1965/6/18)
- Lee Morgan / Cornbread (1965/9/18)
- A Caddy for Daddy (1965/11/18)
- Reach Out (1968/1/19)
Quartet (1955/3/27)
ハンク・モブレーのBN(ブルーノート)盤って、似たような能のないタイトルが多くて分かりにくいのだけど、彼の初リーダー作だ。この時期、旗揚げしたばかりのJM(ジャズ・メッセンジャーズ)の一員で、本作でも一人を除いて全員JMのメンバーが参加している。すなわちドーハムが抜けただけのJMが、ここでのカルテットということになる。モブレーがハード・バピッシュなフラテッド・フィフスを多用したソロを全開させ、彼がこうしたスタイルの第一人者であることを位置づけた貴重な1枚である。脇を固めるシルヴァーの骨太なピアノが、実に微妙なバランスを維持しながら、モブレーの門出に華を添えている。
他に脇を固める面々は、太鼓のブレイキー、大きなヴァイオリンはダグ・ワトキンスという初代JMのサポートを得ながら、最初のトラックの"Hank's Prank(冗談、悪ふざけ)"から快調に飛ばしていく。印象的な導入部から早くものめり込んでしまいそうだ。音を張り上げる訳でもなく、奇をてらったようなフレーズを用いるでもないのに、力強く流れるような音を紡ぎあげていく雰囲気が素晴らしい。別テイクのほうは、太鼓のスネアーの使い方が違っているようだ。ソロ順は前トラックと一緒だが、モブレーの力強さは幾分弱まった感じなるが、太鼓のブレイキーが張り切っており、全トラック中で一番元気だ。次の"My Sin(罪)"、アルバム・タイトルに能がない代わりに曲名は意味深だ。曲想は一転して美しいバラード、しっとりしたピアノの序奏の後、憂鬱そうな雰囲気のテナー吹奏を聴かせる。そして、ヴィニル盤だとA面最後のトラック、"Avila And Tequila"であるが、Avilaは、スペイン中部、旧カスティリア地方の都市。Tequilaは、メキシコ特産の蒸留酒、リュウゼツランの樹液から作る。何れもスペインに関連がありそうだが、単なる語呂合わせのタイトルのようだ。ここではラティン・リズムに乗って楽しそうにテーマを唄い上げるモブレーが印象的だ。(2009/12/05 14:29)
- Hank's Prank (Mobley) 4:29
- Hank's Plank (Alternate take) (Mobley) 4:15*
- My Sin (Mobley) 3:47
- Avila And Tequila (Mobley) 4:29
- Walkin' The Fence (Mobley) 3:37
- Walkin' The Fence (Alternate taake)(Mobley) 4:26*
- Love For Sale (C.Porter) 4:29
- Just Coolin' (Mobley) 4:09
Hank Mobley, ts; Horace Silver, p; Doug Watkins, b; Art Blakey, ds; Recordedat Hackensack, N.J., March 27, 1955 / To. CJ28-5128 (1990) (BN. BLP-5066)
Jay Jay Johnson / The eminent, Vol. 2 (1953)
Side A:
- "Daylie" Double (Johnson) 4:27
- Pennies from Heaven (Burke-Johnson) 4:16
- You're Mine You (Green-HHayman) 3:08
- Turnpike (alternate) 4:12
- It could happen to you (Burke-Van Heusen) 4:45
- Groovin' (Johnson) 4:40
- Portrait of Jennie (Burdge-Robinson)
- Viscosity (Johnson) 4:22
- Time After Time (Syne-Cahn) 4:12
- Capri (alternate) 3:49
The Jazz Messengers at The Cafe Bohemia Vol.1 (1955)
- Introduction by Art Blakey: Soft Winds (Goodman) 12:30
- The Theme (Davis) 8:10
- Minor's Holiday (Dorham) 8:43
- Alone Together (Dietz-Schwartz) 4:10
- Prince Albert (Dorham-Roach) 8:36
The Jazz Messengers at The Cafe Bohemia Vol.2 (1955)
JM(ジャズ・メッセンジャーズ)が、旗揚げされたのは55年2月、当時 「カフェ・ボヘミア」は「パイド・パイパーズ」という名の、グリニッジ・ヴィレッジの一般的なカフェテリアだったという。それが「カフェ・ボヘミア」と言う名のジャズクラブ へと転進したのが、55年春。このアルバムはその年の11月録音の2枚組の内の1枚である。「カフェ・ボヘミア」は、早くも新しいジャズの温床としての地位を確立したようだ。本作をJMのスタート・ラインとするべきだろうし、全編を流れるフレッシュな雰囲気はこうした舞台設定からきている気がする。(2009/12/09 21:27)
Side A:
- Sportin' Crowd (Mobley) 6:28
- Like Someone in Love (Varke-Van Heusen) 8:50
- Yesterdays (Kern-Harbach) 4:17
- Avila and Tequila (Mobley) 12:14
- I Waited for You (W.Fuller) 9:21
A面2曲目の"Like Someone in Love"は、私の好きなスタンダード・バラード。またB面最初、モブレーの流麗な"Avila and Tequila"は、アフロ・キューバン・リズムが素晴らしい名曲。とにかく快演揃いのアルバムだ。ちなみに、この後のブレちゃんとシルちゃんの「JM本家の暖簾争い」を発端とする別離の結果、初代JM唯一のライヴ・・レコーディングになった。1956年になって、ケニー・ドーハムが自己のグループを作るために脱退、同年ドーハムの代わりに入ったドナルド・バードを含めアート・ブレイキー以外のメンバーを引き連れてホレス・シルバーが脱退した。2代目のJMが結成される直前ドーハムをリーダーとして、ベース以外は同メンバーで"Afro Cuban(1535)"というアルバムが吹き込まれている(別途、紹介の予定)。
The Jazz Message of Hank Mobley (1956)
- There Will Never Be Another You (H.M.Woods) 5:47
- Cattin' (H.Mpbley) 4:36
- Madeline (H.Mobley) 4:40
- When I Fall in Love (Heyman, Youg) 3:46
- Budo (B.Powell) 7:30
- I Married An Angel (Rodgers, Hart) 6:58
- The Jazz Message (with Freedom for All) (O.Cadena) 8:03
Art Blakey / Nica's Dream (1956)
- Infra Rae (H.Mobley) 6:57
- Nica's Dream (H.Silver) 11:51
- It's You or No One (Kirn) 5:36
- Ecaroh (H.Silver) 6:03 - Horace's revers title
- Carol's Interlude (H.Mobley) 5:36
- The End of A Love Affair (Edward Reding 1950) 6:42
- Hank's Symphony (H.Mobley) 4:37 / total 47:29
Hank Mobley / Mobley's Message (1956)
55年にジャズ・メッセンジャーズで事実上のデビューを飾ったハンク・モブレーが、独立後にサヴォイ・レーベルの次に吹き込んだリーダー・アルバム。本作の共演者は初代メッセンジャーズからのワトキンス、2代目のバードといったメンバーが参加、アート・ブレイキーとホレス・シルバーのコンボを軸に展開していた当時のイースト・コーストシーンを彷彿とさせる。"Bouncin' With Bud (Bud Powell)"や"52nd Street Theme (T.Monk)"、"Au Privave (C.Parker)"のオリジナルなどバップの匂いが残っているが、モブレーのオリジナルも"Minor Disturbance"と"Alternating Current"の2曲が聴かれる。前曲はAABAの32小節、タイトル通りのマイナー・キー、ラストを飾る後曲はドラムとベースよって始まるテーマらしいテーマのない曲だ。( 2009/12/23 20:43)モブレーやマクリーンもよいが、とりわけ弱冠23歳のバードのラッパが溌剌と闊歩しているようだ。唯一のバラード、"Little Girl Blue (Rodgers - Hart)"ではバードとマクリーンが抜けたワンホーンカルテットで、モブレーが情感たっぷりとした美しいソロをとっており、続くハリス、ワトキンスもすばらしいソロを聴かせてくれる。モブレーの代表作はブルーノートに集中しているが、プレスティッジへの吹き込みも捨てがたい。目まぐるしいハードバップ・シーンが当時の背景にある訳だが、そうしたことを頭に入れて聴いてみるのも面白いと思う。
Side A:
- Bouncin' With Bud (Bud Powell) 6:56
- 52nd Street Theme (T.Monk) 5:41
- Minor Disturbance (H.Mobley) 6:16
- Au Privave (C.Parker) 7:29
- Little Girl Blue (Rodgers-Hart) 8:40
- Alternating Current (H.Mobley) 6:30
The Jazz Message of Hank Mobley Vol.2 (1956/7/23, 11/7)
- Thad's Blues (T.Johns) 9:48
- Doug's Minor B'ok (D.Watkins) 6:40
- B for BB (H.Mobley) 6:31
- Blues Number Two (H.Mobley) 5:00
- Space Flight (H.Mobley) 4:15
Hank Mobley Quintet / Mobley's Second Message (1956)
tam.ra さんからリコメンドのあった表題のアルバムを聴いています。「ファースト・メッセージ」は以前に紹介させて戴いてますので、今日は「セカンド・メッセージ」になります。本作の日本語ライナーを記された小川隆夫さんによれば、モブレイにとって56年は当たり年であったようです。51年にマックス・ローチに見出されて本格的にジャズ・シーンに進出して以来、彼は順調な活動を行っていました。54年にはタッド・ダメロンやディジー・ガレスピーのグループで演奏し、次いでホレス・シルヴァーが結成したクインテットに抜擢されます。云うまでもなくこのバンドこそが、その後ジャズ・メッセンジャーズと名乗るユニットでありました。(2011/01/14 21:36)
- These Are The Things I Love (Barlow-Harris) 6:41
- Messages from the Border (Mobley) 6:07
- Xlento (Mobley) 5:40
- The Latest (Mobley) 5:52
- I Should Care (Cahn-Stordahl-Weston) 10:04
- Crazeology (Benny Harris) 6:59
シルヴァーのクインテットでBNに2回のセッションを行い、この録音が契機となってモブレイはBNで行われた幾つかのセッションにサイドマンとして参加、そして記念すべき初リーダー録音が早くも55年3月にこのプレスティッジ・レーベルで行われます。有名な「ハンク・モブレイ・クァルテット」ですね。途中、ちょっと省略しますが・・・。
だいぶ中断してしまってすみません。これらのメンバーによる演奏からは、「リーチアウト」なんかと違ってジャズ・メッセンジャーズやシルヴァーに代表されるハードバップ初期のスタイルを堪能できます。この時期、モブレイは未だ後年ほどファンキーではなく、彼の原点があるように感ずるのは私だけではないと思います。この若き日の、充実したモブレイがサヴォイ盤にもありましたね。
Jackie McLean / 4, 5 & 6 (1956)
- Sentimental Journey (Green-Brown-Hamer) 9:57
- Why Was I Born? (Kern-Hamerstein) 5:13
- Contur (K.Drew) 4:58
- Confirmation (C.Parker) 11:25
- When I Fall in Love (Heyman-Young) 5:32
- Abstraction (M.Waldron) 8:00
Tenor Conclave (1956)
- Tenor Conclave (H.Mobley) 11:02
- Just You, Just Me (Klages -Greer) 9:28
- Bob's Boys (H.Mobley) 8:17
- How Deep Is The Ocean (Irving Berlin) 15:03
Hank Mobley Sextet (1956/11/25)
モブレーのブルーノートにおけるセカンド・アルバム。初リーダー作は5000番台なので、12インチになってからの初リーダー作といっても良い。デビューして間もないリー・モーガンと、既にジャズ・メッセンジャーズで評価を得ていたドナルド・バードを競演させ、全曲モブレーにオリジナル曲を書かせるという企画のブルーノートらしいセッション。初リーダー作と来れば“自分がいかに目立つか”が相場であろうが、私のお気に入り、モブレーの場合は違ったりする。先ずは不思議なことにラッパが2本入っている。ジャケ写、左からドナルド・バードとリー・モーガン(一番右はモブレー)だが、ソロのときに甲高く少しとがっているように聴こえるのがモーガンで、少し丸みがあるのがバードである。各曲のソロ順番等については、明日に追記したい。(2009/09/22 20:38)
Side A:
- Touch and Go (H.Mobley) 9:17
- Double Whammy (H.Mobley) 8:11
- Burrell of Funk (H.Mobley) 11:20
- Mobleymania (H.Mobley) 8:28
Hank Mobley and His All Stars (1957/1/13)
ブルーノート1500番台では珍しいモブレーのワン・ホーンのアルバム。ブレイキーとシルヴァーが、仲良く演奏していることで有名な1枚だ。仲良く演奏することが悪いの?と、突っ込みが入りそうだが、これには訳がある。このセッションの半年前、初代JM(ジャズ・メッセンジャーズ)で音楽的にリーダーシップをとっていたピアノのシルちゃんは、ブレちゃん以外のメンバーを全員連れてJMから独立した。所謂、「暖簾分け事件」て云うのがおこり、ブレちゃんのもとに残ったのは、JMという暖簾だけだったという。そのとき2人にどんな感情の対立があったのか分からないが、喧嘩別れしたのでないことはこのアルバムが証明しているようだ。共演メンバーに「ヴァイブ」のミルト・ジャクソンがいるのが珍しい。これもライオンの尽力によるものだろうか。(2009/12/03 21:42)
Side A:
- Reunion (Mobley) 6:58
- Ultramarine (Mobley) 10:40
- Don't Walk (Mobley) 7:52
- Lower Stratosphere (Mobley) 6:44
- Mobley's Musings (Mobley) 6:10
モブレーのBN(ブルーノート)におけるリーダー第2作。このアルバムに聞くモブレーは、どの曲にあっても唄うように吹き綴っている。全編がモブレーのオリジナルで、A面最初のトラック、"Reunion"では、ミルト・ジャクソンとのユニゾン・パートの後、モブレー、ミルト・ジャクソン、シルヴァーの順に明るいソロを聴かせてくれる。続くメディアム・テンポの"Ultramarine"は、マイナー調の曲でモブレーがテーマ吹奏を行った後、ミルト、シルヴァー、モブレーとソロが延々と展開される。最後はミルトとモブレーの4ヴァース・チェンジ、太鼓の4ヴァース・チェンジの後モブレーのテーマ吹奏に戻って終わる。
B面の"Don't Walk"は、ブレイキーの太鼓のイントロに煽られてモブレーが魅力的なテーマを吹奏、そのままソロに突入、続くミルトの水の滴るようなヴァイブ、シルヴァーの良い感じのシングルトーンのソロもA面側より緊張感が高いようだ。モブレー、ミルトの順で太鼓との4ヴァース・チェンジも良い。B-2の"Lower Stratosphere"はブルース、テーマのモブレーとミルトの掛け合いで始まる。ソロはシルバー、モブレー、そして大きなヴァイオリンのワトキンスが全体を引き締めた後、ミルトと何れもファンキーな演奏が一体感を出している。最後の"Mobley's Musings"はバラード、シルヴァーのイントロに続いて、モブレーがテーマ吹奏。シルヴァー、ミルト、モブレーの順にソロを展開。全編を通じてモブレー、シルヴァー、そしてミルトのリラックスした雰囲気が魅力的であり、ブレイキーが控え目なのが良い。
Jimmy Smith / A Date with Jimmy Smith Vol.1 (1957)
- Fallin in Love with Love (Rodgers-Hart) 12:06
- How High the Moon (Hamilton-Lewis) 5:57
- Funk's Oats (J.Smith) 15:53
Hank Mobley Quintet (1957/3/9)
今、読んでいる本は「リヴィエラを撃て」、寡作な作家で知られる高村薫の作品です。それに比べたらハードバップのモブレーの作品は、ジャンルこそ違いますが彼女より1桁多いようです。遠慮なしに続けて聴いても10倍以上は持ちます。そんな訳で休日の昼下がり、久々に気合の入った本作をターンテーブルに乗っけてみました。ブルーノートからの3作目(10インチ盤を含めると4枚目)に当たり、シルバー、ワトキンス、ブレイキーに加えてホーンはファーマーが参加したクインテット編成。A、B面とも全てがモブレーのオリジナル、録音が57年とくれば聴かない訳にいきません。4000番台に人気盤が目白押しのモブレーですが、この1500番台のシリーズは「能のないタイトル」が災いしてかパッとしないようです。でも、この時期(初夏)の天気のような溌剌としたモブレーが聴けるんです!(2010/05/09 14:57)
- Funk in Deep Freeze (Mobley)
- Wham And They're Off (Mobley)
- Fin de L'Affare (Mobley)
- Startin' From Scratch (Mobley)
- Stella, Wise (Mobley)
- Base On Balls (Mobley)
A1の"Funk in Deep Freeze"、AA'BA32小節のお馴染みのテーマが吹奏された後、ファーマー、シルバー、ワトキンス、そしてモブレーとソロが展開されます。最初のファーマーの出来もなかなかです。本作中一番でしょうか。A3辺りでもそうですが、通り一編というかエモーショナルな面に欠けたプレイが目立ちます。それに反してモブレーは、ぐいぐい焦点を絞った展開を聴かせてくれます。良いですな。A2"Wham And They're Off"、「ドカン、各馬一斉ににスタート」でしょうか。タイトルの邦訳を間違えているかも知れませんが、アップテンポでぐいぐい引っ張るモブレーが溜まりません。A3"Fin de L'Affare"、「情事の終わり」では、A2で飛ばしすぎたせいか、バラードでモブレー、ファーマー(ミュート)、シルバーとソロが展開されます。A1、動画ではないですが、YouTubeにありました・・・。
B1、scratchは、出走を取り消した馬の意がありますので、「最初(ゼロ)からの出発」でしょうか。魅力的なテーマ提示の後、モブレー、ファーマー、シルバーと溌剌と各馬出走します。4ヴァースチェンジでぐいぐい盛り上げる部分が、第4コーナーです。B2、「ステラ寄りに」でしょうか。ここではシルバーが最初にソロをとった後、モブレー、ファーマー、ブレイキーと続きます。B3、ちょっと下品ですが「球の付け根」でしょうか。いや、間違いです。野球の「フォアボールによる出塁」の意ですな。ワトキンスのソロで始まってシルバーが絡み、徐々に盛り上げます。ライナーでマイケル・カスクーナも記していますが、本作を録音した頃のモブレーは飛ぶ鳥を落とす勢いの新進気鋭のサキソフォニストだったようです。だけど、その後の彼の悲惨な人生を知った上でこのような溌剌とした演奏を聴くと、もの哀しい気分を感じてしまいます。
Hank Mobley / Hank (1957)
- Fit for a Hanker (Mobley)
- Hi Groove Low Feed-back (Mobley)
- Easy to Love (C.Porter)
- Time After Time (Styne, Cahn)
- Dance of the Infidels (B.Powell)
Hank Mobley (1957/6/23)
57年にモブレーは、全部で4枚のリーダー作をブルーノートに吹き込んでいる。"Hank Mobley And His All Stars (1544)"、"Quintet (1550)"、"Sextet (1560)"、そして本作(1568)だ。このレコードは、比較的地味な顔ぶれかも知れない。そのため早くから廃盤の憂き目にあい、長い間入手困難であったというが、本作の魅力はそういうレアな価値だけではないと思う。マイルドなモブレーと好対照なハードマン、カーティス・ポーターの2人で、全編熱いプレイが繰り広げられるのだ。ハードマンは、モブレーより3歳年下で33年、オハイオ州クリーヴランドの生まれ。56年にJMのレギュラー・メンバーになり、大きく注目されるようになった。JMには58年まで在籍したが、その間にマクリーンなどとも、ハードバップの楽しい作品を残している。歯切れ良いアタックの効いた吹奏が魅力だ。いっぽうポーターは、29年ペンシルヴァニア州フィらディルフィアの生まれで、56年NYへ出てミンガスのグループに加わった。更に注目すべきは当時無名のソニー・クラークのデビュー作でもある。西海岸からNYに移って2ヶ月余りのクラークは、緊張することなく素晴らしいバッキングをつけている。"Bag's Groove"でのピアノ・ソロは、かの名作"Cool Struttin'"を彷彿とさせる。チェンバース、テイラーのリズム陣も申し分ないと思う。モブレーの魅力も勿論だが、こうしたハード・バッパーの隠れた名手の演奏を聴くことができるのが、本作の魅力だ。(2009/12/08 21:40)
Side A:
- Mighty Moe & Joe (Curtis Porter)
- Falling in Love with Love (Rodgers - Hart)
- Bag's Groove (M.Jackson)
- Double Exposure (Mobley)
- News (Curtis Porter)
Sony Clark / Dial S For Sonny
- Dial S For Sonny (S.Clark) 7:22
- Bootin' It (S.Clark) 5:14
- It Could Happen To You (Burke-Van Heusen) 6:56
- Sonny's Mood (S.Clark) 8:36
- Shoutin' On A Riff (S.Clark) 6:42
- Love Walked In (Gershwin) 5:48
Sonny Clark / Sonny's Crib (1957)
- With A Song In My Heart (Rodgers-Hart) 7:55
- Speak Low (Weill-Nash) 6:49
- Come Rain Or Come Shine (Merser-Arlen) 7:28
- Sonny's Crib (S.Clark) 13:30
- News For Lulu (S.Clark) 8:33
Hank Mobley / Peckin' Time (1958/2/9)
- High And Flighty (Mobley) 6:05
- High And Flighty (alternate take) 6:05*
- Speak Low (Weill - Nash) 7:10
- Speak Low (alternate take) 7:10*
- Peckin' Time (Mobley) 6:50
- Stretchin' Out (Mobley) 9:00
- Stretchin' Out (alternate take) 6:45*
- Git-Go Blues (Mobley) 12:20
Lee Morgan, tp; Hank Mobley, ts; Wynton Kelly, p; Paul Chambers, b; Charlie Persip, ds; Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey on Feb. 9, 1958 / BN CDP-7-81574-2 (BN BLP-1574)
Art Blakey / At The Jazz Corner of The World Vol.1 (1959/4/15)
- Hip Sippy Blues
- Justice
- The Theme
- Close Your Eyes
- Just Coolin
Soul Station (1960/2/7)
今宵はモブレーの超名盤、フレーズの隅々までというか微妙なトーンが心地よい。そして、昨晩はジャズフラッシュで聴いた淺川マキが、心地よく、あの時代の気分までが狭い店内に滲み出してくるようであった。セピア色に変色したかのような(元々そんな色合いだったかも)ジャケ写を眺めたときは、半ば懐かしい思い出に過ぎなかったのに、スピーカから出る音は妙にリアルで生めかしい。レコードの音は感動の冷凍保存パックだという人がいるが、云いえて妙だ。彼女の唄はやはりライヴが魅力で、かけてくれたのは72年(録音はその前年暮かもしれない)の紀伊国屋ホールでのライヴ盤、今田勝(p)、荻原信義(g)、稲葉国光(b)、つのだひろ(ds)、杉浦芳博(g)・・・と、当時の一流どころがバックアップしている。「赤い橋」、「ちっちゃな時から」、「朝日のあたる家」、「かもめ (寺山修司)」が別の音源であったので末尾に記した。(2009/12/29 22:10)
- Remember (Berlin) 5:40
- This I Dig of You (Mobley) 6:24
- Dig Dis (Mobley) 6:08
- Split Feelin's (Mobley) 4:53
- Soul Station (Mobley) 9:05
- If I Should Lose You (Robin - Rainger) 5:08
さて淺川マキを前置きにしながら、表題に戻ってみたい。本作はモブレーの代表作というだけでなく、屈指の名盤。前作"Pekkin' Time(BN.1574)"では典型的なハードバップを展開していたが、構成力とかリリカルなインプロヴィゼーションへの変化は、サイドマンとして参加した"At The Jazz Corner of the World(BN 4015-6)"辺りを経て本作で完成しているようだ。モブレーにとって数少ないワンホーン・アルバムで、ケリー、チェンバース、ブレイキーといった一流どころのバックアップにより一層アルバムの質を高めているのは、前述の"Maki Live"と同じだ。この時期マイルス・コンボに客演したモブレーだが、そこでのポテンシャルの低さは、魅力を引き出してくれた本作のBN盤と本当に対照的だ。
Roll Call (1960/11/13)
- Roll Call (H.Mobley) 10:35
- My Groove Your Move (H.Mobley) 6:07
- Take Your Pick (H.Mobley) 5:27
- A Baptist Beat (H.Mobley) 8:55
- The More I See You (Gordon-Warren) 6:48
- The Breakdown (H.Mobley) 4:57 / total 43:06
Workout (1961/3/26)
- Workout (Mobley) 10:03
- Uh Huh (Mobley) 10:47
- Smokin' (Mobley) 7:31
- The Best Things in Life Are Free (DeSylva - Brown - Henderson) 5:19
- Greasin' Easy (Mobley) 7:01
Hank Mobley / Turn Around (1965)
- The Turnaround (Mobley) 8:18
- East of the Village (Mobley) 6:47
- The good Life (Distel-Reardon) 5:10
- Straight Ahead (Mobley) 7:03
- My Sin (Mobley) 6:53
- Pat'n Chat (Mobley) 6:29
Hank Mobley / No Room For Squares (1963/10/2)
- No Room For Squares (Mobley) 6:55
- No Room For Squares (alternate takes) 6:42*
- Three Way Split (Mobley) 7:50
- Comin' Back (Mobley) 6:20*
- Me 'N You (Morgan) 7:15
- Carolyn (alternate take) 5:35*
- Carolyn (Morgan) 5:30
- Syrup And Biscuits (Mobley) 5:31*
Lee Morgan, tp; Hank Mobley, ts; Andrew Hill, p; John Ore, b; Philly Joe Jones, ds; Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ on Oct. 2, 1963 / Cap. CDP7-84149-2 (BN.)
Dippin' (1965/6/18)
- The Dip (Mobley)
- Recard Bossa Nova (D.Ferreira)
- The Break Through (Mobley)
- The Vamp (Mobley)
- I See Your Face Before Me (Schwartz-Dietz)
- Ballin' (Mobley)
A Caddy for Daddy (1965/11/18)
- A Caddy Foe Daddy (Mobley) 9:15
- The Morning After (Mobley) 9:35
- Venus Di Mildew (Wayne Shorter) 7:05
- Ace Deuce Trey (Mobley) 7:10
- 3rd Time Around (Mobley) 6:10
Reach Out (1968/1/19)
- Reach Out (I'll Be There)(Holland - Dozier - Holland) 6:47
- Up Over Abd Out (Mobley) 5:51
- Lookin' East (Mobley) 5:17
- Goin' Out Of My Head (T.Randazzo - B.Weinstein) 7:25
- Good Pickin's (Mobley) 5:30
- Beverly (Lamont Johnson) 7:04