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ドナルド・バード
ドナルド・バード(Donald Byrd, 1932年12月9日-2013年2月4日 )は、アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト市出身のジャズ・トランペット奏者。1958年からはリーダーとしてブルーノートレーベルを中心に数多くのアルバムを残した。『Fuego』(1959年)はその中でもバードのハードバップ期の代表作として知られる。リーダー作品の他にサイドメンとしての録音も多く、共演したミュージシャンはホレス・シルヴァー、ジョン・コルトレーン、ジャッキー・マクリーン、ソニー・クラーク、ソニー・ロリンズ、ハンク・モブレー、ハービー・ハンコック、セロニアス・モンクなど多岐にわたる。1960年代に入ると実験的な作品も残した。『New Perspective』(1963年)では、大胆にゴスペル色を取り込んだコーラスを導入し、ジャズとの融合を試みた。その後もゴスペル、黒人霊歌、R&B、フォーク、ポップスからも題材を集めた作品を制作した。同時期にフランスに渡り、パリでナディア・ブーランジェに作曲法を学んだり、スイスでルネ・レイボヴィッツにも師事した。この時期にエリック・ドルフィーの死の直前のヨーロッパ・ツアーにも参加している。(Wikipedia)
- Lou Donaldson / Wailing with You (1955)
- Byrd's Word (1955)
- Jackie McLean / Quintet (1955)
- Hank Jones / Quartet, Quintet (1955)
- The George Wallington Quintet / Jazz for the Carriage Trade (1956)
- Kenny Clarke / Bohemia After Dark (1956)
- Jackie McLean / Lights Out! (1956)
- Hank Mobley / The Jazz Message of (1956)
- Art Blakey / Nica's Dream (1956)
- Byrd Blows on Beacon Hill (1956)
- Elmo Hope / Informal Jazz (1956)
- Gene Ammons / Jammin' With Gene Ammons All Stars (1956)
- Hank Mobley / Mobley's Message (1956)
- Jackie McLean / 4, 5 & 6 (1956)
- Art Farmer / and Donald Byrd Two Trumpets (1956)
- Paul Chambers / Whims of Chambers (1956)
- Horace Silver / Six Pieces of Silver (1956)
- Hank Mobley / Hank Mobley Sextet (1956/11/25)
- Sonny Rollins / Volume One (1956)
- The Prestige All Stars / All Night Long (1956)
- Jimmy Smith / A Date with Jimmy Smith Vol.1 (1957)
- Art Taylor / Taylor's Wailers (1957)
- Hank Mobley / Hank (1957/4/21)
- John Coltrane / Winner's Circle (1957/9)
- Sonny Clark / Sonny's Crib (1957/10/9)
- George Wallington / Jazz at Hotchkiss (1957)
- Red Garland / Soul Junction (1957/11/15)
- Red Garland / All Mornin' Long (1957/11/15)
- Lou Donaldson / Lou Takes Off (1957)
- John Coltrane / The Last Trane (1958/1/10)
- John Coltrane / Lush life (1958/1/10)
- Pepper Adamas / 10 To 4 At The 5-Spot (1958)
- John Coltrane / Black Peals (1958)
- Jackie McLean / New Soil (1959)
- Fuego (1959)
- Byrd in Flight (1960)
- At the Half Note Cafe Vol.2 (1960)
- The Cat Walk (1961)
- A New Perspective (1963)
- Hank Mobley / Turn Around (1963)
- Duke Pearson / Wahoo! (1964)
Byrd's Word (1955)
先日新潟市主催の探鳥会に参加したら、ヴォランティアで説明して下さった方の説明が面白い。お名前を忘れてしまったので、仮にドナルドさんとしておきます。そのドナルドさん曰く、ミソサザエとかオオヨシキリの♂は、1羽の♀で満足できなくて相方を傷つけるだけどころか殺してしまうほど精力が強いのだそうです。一夫多妻に一妻多夫、つがい外交尾に、託卵、集団営巣など、意外な野鳥の繁殖戦略に驚きました。さて、ジャズ界のドナルドさんこと、ドナルド・バードが今日のテーマです。アルバム名は「バーヅ・ワード」、最近ハマリかけているバードにかけたのですが、英語のスペルが少し違ったりで最初から当惑気味です。(2010/01/27 23:06)
- Winterset (Frank Foster) 7:10
- Gotcha Goin' N' Comin' (O.Cadena) 9:51
- Long Green (Donald Byrd) 4:28
- Stareyes (D.Raye, G.De.Paul) 7:45
- Someone To Watch Over Me (G.&I.Gershwin) 7:38
発売レーベルのサヴォイは、40年代にハドソン川を挟んだニューアーク(NJ)で電気屋を営んでいたハーマン・ルビンスキーによって設立、50年代ではカーティス・フラーの代表作で知られています。当時のライバルであったBNがハード・ドライビングなジャズを指向していたのに比べ、サヴォイはリラックスしたよりソフトなサウンドを狙ったと、当時のプロデューサー、オジー・カデナは云っています。なるほど、本作のように胸がポッと暖まるようなアルバムが多いようです。本作の翌56年「インディード」で派手にデビューするモーガンと比較されて何かと損なバードですが、汚れを知らぬナイーブなラッパを愛聴しているファンも多いはずです。
このカデナに対して音楽的なアドバイスを送り、製作のSV的な役割を果たしたというのが、本作にも参加している太鼓のケニー・クラークです。ピアノにハンク・ジョーンズ、大きなヴァイオリンにチェンバース、原盤のクレジットはディブ・チェンバースと記されています。当時マイルスのグループに在籍していたので変名になっていたためと思いますが、ジャケ写に堂々と写されているのでバレバレです。リズム・セクションのレベルの高さに脱帽。なお、カデナとクラークの2人3脚ぶりが示された作品の代表に「ボヘミア・アフター・ダーク」が残されています。
1、"Winterset"は、フランク・フォスターのオリジナル。いかにも50年代らしいホットな演奏。テーマの後、バード、フォスター、ハンク、チェンバースとソロが展開されます。後半のフォー・バースの部分が、エキサイティングでフォスターが「貴方と夜と音楽と」のフレーズを引用したりして楽しめます。2、"Gotcha Goin' N' Comin'"は、前述のカデナのオリジナル。ドラムソロで始まり、そこにベースがからみ、ウォーキング・ベースになり、ハンクの綺麗なタッチのピアノが続き、そしてバードが登場してディープなブルース・プレイを展開します。アーシーなムードが横溢した演奏と言えるでしょう。
3、"Long Green"は、バードのオリジナル。すこぶる「快活」な演奏と、CDの日本語ライナーには記されています。ソロ1番手のフォスターもバードもすこぶる「快活」なソロをとるのであります。4、"Stareyes"は、パーカーの愛奏曲。バードがテーマを吹き、ブリッジの部分だけフォスターにバトンタッチ、再びバードが吹いて、そのままソロに突入します。ブラウニーゆずりの歌心を感じさせる演奏です。ラストはバラードの"Someone To Watch Over Me"。バードはいつもの、ちょこ上ずったようなトーンで切々とテーマを歌い上げます。勿論、来月に来日するハンクのホンワカとしたソロも、素晴らしいですね。
The George Wallington Quintet / Jazz for the Carriage Trade (1956)
- Our Delight (Todd Dameron) 5:35
- Our Love Is Here to Stay (Gershwin-Gershwin) 5:29
- Foster Dulles (Frank Foster) 5:04
- Together We Wail (Phil Woods) 6:48
- What's New (Haggart-Burke) 7:08
- But George (Phil Woods) 5:50
Kenny Clarke / Bohemia After Dark (1956)
マンハッタンは地図で眺めると縦に長い細長い島である。信濃川と関屋分水で囲まれた新潟島、或いは新潟市や新潟県のように東西に長いロケーションと違い特徴的だ。セントラル・パークはそのほ中央に位置し、その南をミッド・タウンさらに南をダウン・タウンと呼ぶ。50年代はダウン・タウンのグリニッジ・ヴィレッジに多くのジャズ・クラブがオープンしたようだ。30年代からあったヴィレッジ・ヴァンガードを別格にすれば、この時期有名ジャズクラブとして人気を誇っていたのが、カフェ・ボヘミア。本作はそこで夜な夜な展開されていたジャズが記録された歴史的な名盤という訳である。Savoyのレコーディングを、久々に日本コロンビアがビニル盤にして再発してくれた貴重な1枚である。(2009/08/30 20:39)
Side A:
- Bohemia After Dark (O.Pettiford) 6:06
- Chasm (J&N.Adderley) 4:18
- Willow Weep For Me (A.Ronell) 6:18
- Hear Me Talkin' To Ya (J&N.Adderley) 3:12
- With Apologies To Oscar (J&N.Adderley) 9:06
- We'll Be Together Again (C.Fisher-F.Laine) 5:42
- Late Entry (J&N.Adderley) 6:56
Art Blakey / Nica's Dream (1956)
- Infra Rae (H.Mobley) 6:57
- Nica's Dream (H.Silver) 11:51
- It's You or No One (Kirn) 5:36
- Ecaroh (H.Silver) 6:03 - Horace's revers title
- Carol's Interlude (H.Mobley) 5:36
- The End of A Love Affair (Edward Reding 1950) 6:42
- Hank's Symphony (H.Mobley) 4:37 / total 47:29
Byrd Blows On Beacon Hill (1956)
ドナルド・バードはトランジションに3枚のリーダー作を残しています。「バード・ジャズ(1955)」、「バーズ・アイ・ヴュー(1955)」、そして本作(1956)です。diglogというブログを拝見していたら、急に聴きたくなりました。バードにしては、珍しいワンホーンの作品です。diglogの管理人のようにオリジナルではなく、残念ながら01年に東芝から再発されたCD国内盤ですが、トランジション特有の小さな冊子のコピーまで付属していて微笑ましい限りです。日本語ライナーは大村幸則さんが記されていました。その大村さんの言によればピアノと太鼓はボストンの生まれらしいので、ビーコンヒルというボストンの高級住宅街でのブロー、というタイトルになったのではないかと愚考しています。(2010/03/19 21:26)
- Littlr Rock Geteway (Sullivan) 7:02
- Plka Dots And Moonbeams (Burke - Van Heusen) 7:18
- People Will Say We're In Love (Rodgers - Hammestein II) 3:36
- If I Love Again (Oakland - Murray) 4:39
- What's New (Haggart - Murray) 4:39
- Stella By Starlight (Young - Washington) 3:42
早速、聴いていきますが、1曲目"Littlr Rock Geteway"は、ピアノの心地よいミディアムテンポによる序奏からバードが明るく澄みきったラッパでテーマを吹奏していきます。diglogさんも云っていますが、中域から高域にかけての丁寧なフレージングが魅力です。続くピアノは写真を眺める限り白人のようですが、私にとっては落ち着いて聴けますが凡庸。ブリッジのワトキンスなかなか。2曲目"Polka Dots And Moonbeams(水玉模様と月光)"は、お馴染みのバラード。バードは最初から歌心あふれる艶やかなトーンで主役を演じていきます。滑らかに上下する一つ一つのフレーズが、溜まりません。3曲目"People Will Say We're In Love"、これも有名なスタンダードになりますが、突然主役が抜けピアノトリオで演奏されます。クラークのように後乗りのピアノが魅力的だと思います。
ここからLPではB面、CDでは4曲目"If I Love Again"、軽快な太鼓に導かれバードのミュートによるテーマが吹奏されます。軽やかなスイング感溢れる味わいが、素晴らしいの一言です。ピアノ、太鼓が盛り上げた後、バードに戻ってお終い。5曲目"What's New"、3曲目と同様にバードを除いたピアノトリオでの演奏になります。ノッシノッシと闊歩するワトキンスと、軽やかなピアノが対照的です。ラストはお馴染みの"Stella By Starlight(星影のステラ)"、幾分早めなテンポでバードが溌溂としたテーマを吹奏します。アドリブの展開も聴きものです。ピアノのサンティシも頑張っています。冒頭に記したように、この時期2管クインテット以上の編成で名声を博したバードなので、ワンホーンでのアルバムは珍しいと思います。
Paul Chambers / Whims of Chambers (1956)
- Omicron (D.Byrd)
- Whims of Chambers (Chambers)
- Nita (J.Coltrane)
- We Six (D.Byrd)
- Dear Ann (Chambers)
- Tale of the Fingers (Chambers)
- Just for the Love (J.Coltrane)
Byrd's Eye View (1956)
青空の広がった今日、新潟県野鳥愛護会主催の「瓢湖探鳥会」に参加。相棒にピックアップしてもらい、10時に阿賀野市福祉会館ホールで受付を行うと立派な案内パンフを戴きました。参加者名簿の頁を見ると参加総数は125名、7班に分けてグルーピング、主催者側の簡単な挨拶の後、早速出発。瓢湖西側から徐々に管理事務所方向に移動、あやめ園の外側を廻って東新池との境界にある観察舎までが、午前中のプログラムでした。餌付けを行っているせいか昼間も野鳥は多く、オオハクチョウ、コハクチョウに加えて、マガモ、コガモ、トモエガモ、ヨシガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ(最も多い)、キンクロハジロ、ミコアイサ等のカモ類、トビ、カワウ、オオバン等をじっくりと観察できました。それで今日のテーマは「バーズ・アイ・ビュー」という訳なのです。(2010/02/14 23:18)
- Doug's Blues (traditional) 12:06
- El Sino (Harneefan - Mageed) 10:02
- Everything Happpens To Me (M.Dennis) 5:44
- Hank's Tune (H.Mobley) 7:41
- Hank's Other Tune (H.Mobley) 7:28
- Crazy Rhythm (Mayer - Kahn - Caeser) 7:35
トランジションは、50年代に登場した数多いマイナー・レーベルの中でも最右翼。超幻の名盤を含むレーベルの一つとされてきました。特にバードを中心としたハードバップ系の優れた作品もあって、何れも50年代を語る上で見逃せない存在となっています。トラジションは、黒人のジャズマニアでもあるトム・ウィルソンが設立したレーベルで55年に発足、僅か3年余りで倒産。それだけにアルバムの数も多くはありません。ジャケット裏面にライナーのあるものもありますが、本作のように小型のブックレットが添付されていたのもマイナーらしい特徴です。サイドマンは、テナーがモブレイ、リズムセクションはシルバー、ワトキンス、ブレイキーとかなり豪華です。ブルーノートっぽいところに加え、フロントにジョー・ゴードンが入って2トランペットになっています。
1曲目は"Doug's Blues"、タイトルからしてワトキンス作のブルースではないかと思うのですが、クレジットを見ると作曲者のところははトラディショナルとなっています。スロー・ブルースで12分も続くのかと思うと、ちょこ憂鬱になりそうです。出だしはワトキンスのウォーキング・ベース、そこにシルバーのピアノが絡んでくる導入部は悪くないんですが、続いてテーマらしきものを吹くのは、ラッパ2人の内のバードのほうでしょうか。テーマらしいメロディは出てこなくて、アドリブだけでいっちゃうタイプの曲のようです。ソロ2番手はモブレイ、ここでも後半は倍テンポになって盛り上ります。スロー・ブルースで辛いかと思っていたら、割りと大丈夫です。続いてゴードン、シルバーのソロがあって、バードが1コーラスだけソロを挟んで、テーマ?に戻ります。
2曲目"El Sino"、演奏はモブレーが抜けて2ペットによるエキサイティングなチェイスをフィーチャーしています。冒頭、主題のブリッジはゴードンが吹きます。アドリブは、バード、ゴードンの順で1コーラスずつ、全5コーラスにわたって続きます。ぼーっと聴いていると、どちらがバードでどちらがゴードンなのか分からなくなってきます。中盤以降は8バース、4バース、そして2バースで2本のラッパが激しく入り乱れ、益々分からなくなってきます。終盤、シルバーのピアノ・ソロが出てくると、テーマに戻って終わりです。ここまで長めの演奏が2曲続いて、残りは短めのが3曲。ビニル盤だとここまでがA面になるんだと思います。
3曲面"Everything Happpens To Me"、このタイミングでバラードが出てきます。ゴードンが抜けたクインテット編成、テーマはバードがワン・ホーンで吹き始めます。そのままアドリブ・パートへと流れていって、続いてモブレイの登場。終盤、再度バードが出てきて、テーマに戻ります。4曲目"Hank's Tune"、タイトルからしてモブレイの書いた作品、ハード・バップ・チューンです。ゴードン、モブレイ、バード、シルバー、ワトキンスの順でソロが行なわれます。終盤、ゴードン、モブレイ、バードの順で4ヴァースチェンジがあって、テーマに戻ります。
5曲目"Hank's Other Tune"、いくらマイナー・レーベルと言っても、曲名が適当過ぎて感心しません。ゴードン抜きのクインテット編成で、モブレー、バード、シルヴァー、ワトキンスのソロ。終盤、モブレーとバードのチェイスがあってからテーマに戻ります。ヴィニル盤には以上の5曲しか収録されていませんが、CDではラストに"Crazy Rhythm"が同じセッションで追加されています。
Sonny Rollins / Volume One (1956)
- Decision (S.Rollins) 8:00
- Bluesnote (S.Rollins) 6:59
- How Are Things In Glocca Morra (B.Lane-E.Harburg) 6:17
- Plain Jane (S.Rollins) 9:57
- Sonnysphere (S.Rollins) 9:36
The Prestige All Stars / All Night Long (1956/12/28)
凍てついた大晦日の夜、市内某所で"All Night Long(夜通し)"のジャズを聴くために何人か集まった。相棒は、エヴァンスのピアノ・ソロを聴きながら既に談笑中、昨年も一緒になったI氏のハナシが面白い。29年に録音された小唄勝太郎のブギウギ音源が、新潟市歴史博物館「みなとぴあ」に残されているというのだ。新潟のジャズは、戦後になって進駐軍がもたらしたものとばかり思っていた私にとっては意外である。昭和初期の代表的な流行歌手、小唄勝太郎は新潟市の出身。幼い頃から長唄や清元を習い、上京して芸妓として名を上げた勝太郎はレコードデビューし、33年東京音頭を大ヒットさせたというが、その前にヴィクターに吹き込んだ音源のようだ。(2010/01/01 22:40)
Side A:
- All Night Long (Burrell) 17:10
- Boo-Lu (Mobley) 6:44
- Flickers (Waldron) 6:10
- Li'l Hankie (Mobley) 8:20
昨晩はライヴなしのレコード演奏が中心で、除夜の鐘の代わりにマイルス「リラクシン」、ロリンズ「サキソフォン・コロッサス」、ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」、ハンコックの「処女航海」と超名盤特集・・・。2010年へのカウントダウンは、マスターお薦め「ソニー・クラーク・トリオ」、最初のトラック『朝日の如く爽やかに』のアドリブが終わって最初のコーラスに戻ったときに新年を迎えた。その相棒たちとの語らいを思い出しながら、元旦の宵に表題作「オール・ナイト・ロング」を聴くのも悪くないだろう。
名門レーベルのプレスティッジには、ロリンズとコルトレーンを競演させた"Tenor Madness"といったバトルものを数多く出しているが、本作"All Night Long"は、"All Morning Long"、"All Day Long"とともにオールスター・シリーズの一つを構成している。バレル、もしくはバード&バレルの作品として紹介されることが多いアルバムで、メンバーは、若いバレル(25歳)とバード(24歳)の他に、既に物故したモブレー(26歳)、フルートのジェローム・リチャードソン(36歳)、ウォルドロン(31歳)、ワトキンス(22歳)、テイラー(27歳)というセプテット編成。先ずは、A面の全てを占める長尺のタイトル曲"All Night Long"が素晴らしい。スタジオ録音の割にはリラックスした雰囲気が良い。太鼓のテイラーがリズムを刻んだ後、バレルのソロで始まり、リチャードソン、モブレー、バード、再びリチャードソン(テナー)、ウォルドロンと続き、4バースはモブレー、リチャードソン(フルート)、バレル、バード、そしてテイラーだ。
B面は、モブレーの作曲才能を感じさせるオリジナル2曲、ウォルドロン1曲を聴かせる。1トラック目の"Boo-Lu"は、AABA形式のマイナー曲でリチャードソンのフルートによる序奏の後、太鼓のリズムが先行してリチャードソンのテーマ吹奏(ブリッジはバレル)、そのままリアフリカの夜の鳥のように唄うチャードソン、バレル、バード、モブレー、ウォルドロンとソロが続く。2トラック目の"Flickers"も、リチャードソン、バード、モブレーがソロを聴かせる。3トラック目の"Li'l Hankie"は、フルートがブリッジで効果的に使われ、ソロはモブレー、バード(ミュート)、バレル、リチャードソン、ウォルドロンの順。そしてモブレー、バード、リチャードソンの4バース・チェンジ(ライナーは"conversation involves"と記してあった)の後、テーマに戻る。
トランペット、テナー、フルートという、それぞれ異なる個性をもった楽器をフロントにしながら、各々の魅力を違和感なく聴くことができるのは、当時一流のリズムセクションの好サポートによるものが大。楽器の特徴を生かしたアレンジも中々である。CDではさらにボーナストラックが2曲追加になったらしいが、未だ聴いてない。ハード・バップ黄金時代の熱気溢れる好セッション、じっくり楽しみたい方にオススメかと思う。
Jimmy Smith / A Date with Jimmy Smith Vol.1 (1957)
- Fallin in Love with Love (Rodgers-Hart) 12:06
- How High the Moon (Hamilton-Lewis) 5:57
- Funk's Oats (J.Smith) 15:53
Art Taylor / Taylor's Wailers (1957)
- Batland (Lee Sears) 9:48
- C.T.A. (Jimmy Heath) 4:44*
- Exhibit A (sears) 6:13
- Cubano Chant (Ray Bryant) 6:32
- Off Minor (Monk) 5:35
- Well, You Needn't (Monk) 7:54
Sonny Clark / Sonny's Crib (1957)
- With A Song In My Heart (Rodgers-Hart) 7:55
- Speak Low (Weill-Nash) 6:49
- Come Rain Or Come Shine (Merser-Arlen) 7:28
- Sonny's Crib (S.Clark) 13:30
- News For Lulu (S.Clark) 8:33
Red Garland / Soul Junction (1957)
- Soul Junction (Garland) 15:32
- Woody'n You (Gillespie) 6:50
- Birk's Works (Gillespie) 7:35
- I've Got It Bad (Paul Webster-D.Ellington) 6:16
- Hallelujah (Vincent Youmans) 6:33
Red Garland / All Mornin' Long (1957)
- All Mornin' Long (Garland) 20:17
- They Can't Take That Away from Me (I&G.Gershwin) 10:25
- Our Delight (T.Dameron) 6:18
Fuego (1959)
- Fuego (Byrd) 6:37
- Bup a Lunp (Byrd) 4:04
- Funky Mama (Byrd) 10:58
- Low Life (Byrd) 6:01
- Lament (Byrd) 8:25
- Amen (Byrd) 4:47
Byrd in Flight (1960)
ドナルド・バードの4000番台というと先ず「フュエゴ」が挙がるが、本作はラテン系あり、バラードあり、正統派のバップありと、音楽的にも多彩で非常にお得な一枚だと思う(「フュエゴ」は、確か全作バードのオリジナル)。テーマが非常にメロディアスで分かりやすい。そして、もっと云えばモブレーが参加しており、曲によってはマクリーンの参加も嬉しい。先ず、モブレーは名作「ソウル・ステーション」の1ヶ月前の参加、流麗かつ余裕に満ちた演奏が展開されている。そして、マクリーン、ハードバップの枠からはみ出そうとしており尖った感じが良い。サイドメンでは、フィリー・ジョー・ジョーンズを彷彿とさせるレックス・ハンフリーズが聴きものかも知れない。勿論、バードも悪いわけではない。念のため・・・。中音域を中心に、楽器は違ってもモブレーと絶妙なコンビネーションを聴かせる。それと対照的なマクリーンが加わって、ファンには堪らない1枚だ!
- Chana (D.Byrd) 7:19
- Little Boy Blue (R.Rodgers -L.Hart) 7:28
- Gate City (D.Pearson) 5:02
- Lex (D.Byrd) 7:30
- "BO" (D.Pearson) 6:35
- My Girl Shirl (D.Pearson) 5:49
At the Half Note Cafe Vol.2 (1960)
- Jeannine (Pearson) 12:46
- Pure D.Funk (Byrd) 6:08
- Kimyas (Byrd) 11:50
- When Sonny Gets Blues (Fisher-Segal) 5:50
The Cat Walk (1961)
ミシェランで話題のバードランド、銀座塚本素山ビルの一角にあるようです。時々お邪魔するビルなので寄ってみたいと思いますが、コース8千円、予約要と聞いて未だに機会がありません。ガード下にある庶民派の焼き鳥店とは、訳が違うようですね。実は同名の有名ジャズクラブがマンハッタンにもありますので、名前受けを狙ったネーミングが審査に際して奏功したのでしょうか。そんなことを前置きにしながら、今日はバードの名盤「ザ・キャット・ウォーク」というアルバムを紹介したいと思います。(2010/01/28 12:03)
- Say You're Mine (Pearson) 7:22
- Duke's Mixture (Pearson) 7:07
- Each Time I Think Of You (Byrd/Pearson) 5:42
- The Cat Walk (Byrd) 6:46
- Cute (Neal Hefti) 6:23
- Hello Bright Sunflower (Pearson) 7:39
1."Say You're Mine"はピアソンのオリジナル、彼らしさ満開といった感じの哀愁感溢れるファンキーな曲です。テーマに続いてバードのミュート・ソロへと展開、マイルスよりもメロディラインが暖かく語りかけるようで音色もマイルドに感じられます。前半はゆったりとしたテンポでグルーヴィ、後半は倍テンポでドライビングなプレイに変化していきます。続いてペッパー・アダムス、ワイルドな吹きっぷりがバードと好対照です。ピアソンのソロになると、ソフィスティケイティッド・ファンキーと云えばいいのでしょうか。スタイルは嫌味がなく洗練されていています。
2."Duke's Mixture"も、同じピアソン・ナンバーながら前曲とは違った曲想です。ご機嫌にジャンプするテーマ、ダンス曲を思い起こすようなリフの後、バードのソロはオープンで展開されます。続くペッパー・アダムスは相変わらずワイルドで、ピアソンも相変わらず趣味がよくてと、この2人は前曲の雰囲気を踏襲しています。ピアソンの後、短いセカンド・テーマが出てくる構成が、前曲との変化を少し感じさせてくれますが、それもすぐに終わってテーマに戻ってしまいます。
3."Each Time I Think Of You"はバードとピアソンの合作、こちらはファンキーというより、ハードバップ然とした感じの曲想ですが、哀調を帯びたフレーズが魅力的になっています。ソロ先発がアダムス、前2曲と順番が違うせいか、続くバードの突進するような"contribution"(貢献)を感じます。2人の後を受けるピアソンのソロは相変わらず趣味が良いのですが、熱気という点ではクールダウンしています。その弱点を補うかのようにホーンとドラムスの8バースで、大いに気分を盛り上げます。フィリーもここぞとばかりに大いに張り切ります。
4."The Cat Walk"はアルバム・タイトル曲でバードのオリジナル、テーマ部からソロ・パートの冒頭にかけてのストップ・タイムの使い方が絶妙です。猫が忍び足でやってきては、時おり足を止めるといった情景がうまく描かれています。ちなみに"catwalk"とは、(機関室・橋などの一端に設けた)狭い通路とか、(ファッションショーの)客席に突き出た細長い舞台の意味があります。テーマの後、バード、アダムス、ピアソン、ここでは各自のソロの後、セカンド・テーマが出てきますがシルバーがよくやる手法を真似たようです。
5."Cute"はベイシー楽団のアレンジャーで知られるヘフティの曲、タイトルからキュートなバラードを想像してはいけません。フィリーのタイコが連打し、続いて2ホーンと太鼓との掛け合いによって短いテーマが演奏され、バードの急速調のソロへと突き進みます。テンポが早いとフレーズの垂れ流しになってしまいがちなんですが、バードは余裕でメロディアスなプレイを展開しています。続くアダムスのソロも見事そのもので、バリトンでここまでの速吹きは滅多に聴けません。ソロ後半にはバードが絡んで来て大いに盛り上がり、続いてフィリーのドラムソロ。フィリーの場合、ただただ太鼓を叩きまくるだけなんですが、その単純さがむしろシンプルで清々しい気持ちにさせてくれます。
ラストの"Hello Bright Sunflower"はピアソンの曲、曲想がほのぼのとしたナンバーです。原盤ライナーのヘントフは"innocent airiness"(無邪気で快活)という表現を使っていますが、まさしくそんな感じです。バードがミュートで軽くテーマをバウンスさせ、そこにペッパー・アダムスが絡んで来ます。最初からバードとフィリーの4バースという形でアドリブが展開。この構成は面白いと思います。それから普通のソロ展開になってバード、ピアソン、アダムスの順で続きますか、この曲調におけるアダムスのソロは、ややムードぶち壊しのような気がしないでもありません。
A New Perspective (1963)
- Eliah (Byrd)
- Best of Burden (Byrd)
- Cristo Redentor (Pearson)
- The Black Disciple (Byrd)
- Chant (Pearson)